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二人の偉大な先人がこの世を去った2019年

少し遅れてしまったけれど、2019年の振り返りを書いておきたい。

2019年もまた、個人的にも色々なことがあった年だった。ただ、1年間を振り返ってみて最もインパクトのある出来事としていま思い出されるのは、やはり緒方貞子さん中村哲さんという国際協力の世界で活躍した2人の偉大な先人がこの世を去ったという事実だ。年末年始に改めてお2人の著作やドキュメンタリー映像などを見直す機会もあって、改めて、その功績の大きさや力強いリーダーシップにはただただ圧倒された。

お2人と同じ世界で仕事をする人間として、改めて、これからの時代をどのように生きていくべきなのかを、真摯に考えなければいけないと強く思っている。

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緒方貞子さんの功績と素晴らしさは、本当に数多くの視点から語ることができる。ただ、勝手に語らせてもらえば、彼女の真骨頂だったのは、現場主義を貫きながら、組織の論理を超えて巨大組織をあるべき方向に向かわせる大局観だったのではないだろうか。

UNHCRとJICAというある意味では巨大な官僚組織のなかで、トップとして人の血の通った意思決定をしていくというのは、僕なんかにはとても想像できないような困難な道だったはずだ。人間に対する優しさと厳しさの両方を持ち合わせた彼女の視線と行動力は、この世界に生きる身としては、少しでも継承していかなければいけないと強く思う。

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中村哲さんの残した印象的な言葉は以前のポストにも書いたけれど、彼が傑出していたのは、現地の人々に徹底的に寄り添う姿勢と、弱い立場に置かれた人たちに対する絶対的な優しさだった。

そして、中村さんが同時に持ち合わせていた大胆な発想力と行動力とが、60万人の人々のいのちを支える大規模な用水路を完成させるという偉業を成し遂げさせた。今回の事件に対するアフガニスタンの人々の反応を見ていると、これだけ途上国の現地社会から尊敬され愛された日本人はいないのではと思うほどだ。


お2人と仕事をしたこともない僕なんかが語るのもおかしな話だが、お2人に共通していたのは、前例や常識に囚われず、自分が人間としての心で感じ取ったことを堂々と発言し、大胆に行動に移していく姿勢だったのではないだろうか。そして、スタイルや役割はそれぞれ違えど、その姿勢と強い意志とが現場での大きな結果へとつながっていったのだと思う。

お2人に憧れる形で国際協力やNPO/NGOの世界に飛び込んだ若者たちは数知れない。緒方貞子さんの存在があったことは僕が国際協力の道に進んだきっかけの1つだったし、中村哲さんのようなカッコいい草の根の活動をされている方がいるという新鮮な驚きが、僕がNGOの世界にはまっていく要因だった。

2020年からのこれからの時代、お2人は残念ながらもう生きていない。ある意味では、これからは自分たちの世代こそが、次の世代に対して背中を見せていく番になっていく。まだまだ青二才だけれど、自分自身も、お2人が切り拓いた道とその視点の高さをしっかりと受け継ぎつつ、お2人のようなぶれない軸を持って、これからも前に進んでいきたいと思う。

明日からはいよいよ2020年の仕事が始まる。僕は僕の現場で、まずはしっかりと価値を出していきたい。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

「ボランティア活動」の価値の再認識 〜バンコクで考えたこと〜

1泊3日という弾丸日程で参加した、11月のバンコクでの国際会議。その時のメモを途中まで書いておいて、公開しないまま2019年が過ぎそうになっているので、さすがに翌年に持ち越すことは避けるべく、今更ながら記事をアップしてみようと思う。

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僕が参加したのは、IAVE Asia Pacific Volunteering Conferenceなるもの。これまでも国際会議には何度も参加してきたものの、「ボランティア」というある意味で伝統的かつSpecificなテーマでの会議に400人以上の人たちが世界中から集まっている光景は、なんというか壮観だった。

今年のテーマは「Unlocking the Power of Volunteering(ボランティアの力を解放しよう)」。クロスフィールズの活動がこのテーマを体現していると主催者たちに映ったようで、今回は光栄にも基調講演のスピーカーを務めさせてもらった。8年間地道に活動を続ける中で、クロスフィールズの活動に対する海外からの関心や期待がこうして高まっていることには、本当に喜びを感じる。

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↑まさに身に余る役割をもらった感じ。スピーカー一覧のサイトを最初に見た時は背筋が凍った


さて、せっかくなので、今回の会議を通じて考えたことを、3点ほど書き残しておきたい。

①ボランティアこそ共感力を育む最強のツールでは?

プロボノという言葉が定着してからというもの、災害時や大規模スポーツイベントを除けば、最近はあまり脚光を浴びることがなくなった印象のあるボランティア活動。でも、今回の会議で世界中の人たちがその意義を口々に語るのを聞いてみて、グルっと一周回って、ボランティアって最高に素敵だなと感じたのだった。

クロスフィールズが運営する「留職」にしろ、プロボノ活動にしろ、最近注目を集めているNPO関連の活動には、企業が人材育成として活用できたり、個人がキャリアアップする際の一助になるなど、何かしらの明確な目的が置かれているものが多い。もちろん悪いことではないが、なんというか、この10年くらいは、自分起点のモチベーションというか、何かしらの見返りがある実利的な活動が注目を集めてきたように感じる。

それと比較すると、ボランティア活動は、純然たる利他の活動という側面が強いように思う。利己的な意図や損得勘定からは完全に自由になり、誰か他の人のために尽くすということに最も真っ直ぐになれるのが、ボランティア活動の大きな特徴だと言えるかもしれない。

ここのところ、「共感する力(Empathy)が大切」だと色々なところで聞かれるようになった。論理的な思考では人間がAIやロボットに勝てなくなるなか、人間がこれから見直すべきなのが、「共感」の力に着目すべきだと多くの人たちが考え始めているからだ。

そして、完全に私見ではあるのだが、ボランティア活動こそが共感力を高めるための手段として、もしかしたら最強なのではと、僕は思うのだ。自分が所属する組織の利害関係から自由な立場で、誰かのためを思いやって活動し、そしてその活動の反応も感じることができる。これは「共感」の基本である「他者の立場に立って物事を感じたり考える」という活動そのものではないだろうか。(と言って、共感力を鍛えるためにボランティアをしようとか考え始めると、また矛盾が起きていくのだけれど…)

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↑とてつもない数の聴衆が世界中から集まっていた


②シニアによるボランティア活動は、人生100年時代の基礎となる?

今回聞いた講演のなかでも最も印象に残ったものの1つが、香港のボランティア支援団体によるスピーチだ。

世界で最も長寿なこの国では、シニア世代によるボランティア活動が非常に盛んなのだという。彼らは「Young Old」という言葉を使っていたが、高齢社会においては「気持ちの若い年長者」によるボランティア活動こそが、社会を大きく変えていくのだという力強いメッセージだった。

香港と同じく超高齢社会を迎える日本においても、シニア世代による社会参画をどう考えるのかは、国家レベルで考えるべきイシューだと思う。ボランティア活動は、シニア世代を活性化して健康寿命を伸ばすという観点からも、労働人口が減る中での社会サービスの担い手の確保という意味からも、大変意義深い活動ではなかろうか。

なお、シニア世代をボランディアに巻き込む上で大切なのは、「①現役を引退してからではなく、引退前からボランディアに誘う」「②孫と一緒に参加できる活動から始めてもらう」「③巻き込み上手な人から誘って、どんどん友達を呼び込んでもらう」といった点だそうだ。どれも長年の経験に裏打ちされた納得感のあるレッスンであり、唸る点が多かった。

最後に、この香港の団体は、「大変な政治状況が続いているが、きっとボランティア活動こそがいまの苦しい香港の状況を打開する力になれると私は信じている」というメッセージでスピーチを締めくくっていたが、この言葉は僕含む多くの聴衆の胸を打つものがあった。

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↑演出や装飾がとても凝っている会場の様子


③ボランティア活動を通じてSocial Capitalが積み上がる?

最後に、最近個人的によく考えるようになっている「Social Capital(社会関係資本)」という概念について。簡単に言えば、”社会や地域における人々の信頼関係や結びつき”のことで、最近ではOECDなども国や社会の豊かさを表す指標として、注目していたりする。

今回の会議への参加を通じて思ったのは、ボランティア活動ほどSocial Capitalを豊かにする活動はないのではということだ。そもそも、ほとんどのボランティア活動というのは、緩やかな人の結びつきやご縁によって成り立っている。人間関係がないところにボランティア活動は発生しないし、ボランティア活動によってこそ、コミュニティのなかに信頼関係が育まれていく。

そして、ボランティア活動に従事する人たちは、豊かなSocial Capitalを持っていて、また、Social Capitalの活かし方がとても上手い。この会議に僕が呼ばれたプロセスも、なんというか、すべてが信頼関係から生まれた奇跡的なご縁だ。このつながりのなかでは、誰もが損得の関係性とは無縁なのだ。だから面白いし、人と人の関係が太く強くなるのだ。今回のカンファレンスで仲良くなった人とは、僕はきっとこれからも関係性が続いていくと僕は確信している。

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↑今回僕を読んでくれた主催者のAnneとの記念写真


というわけで、あらゆる意味で、これからまたボランティア活動の価値が見直されるのでは、という僕のザックリとした抽象的な予兆について、書きなぐってみた。 折しも来年はオリンピック・パラリンピックでボランティア活動を経験する人の数が日本国内でも一気に膨れ上がるはず。ぜひ、2020年は日本全体でボランティアがもう一度盛り上がっていく年になって欲しいと思う。

なお、この会議を経てボランティアについて改めて考えてみようと早瀬昇さんの『「参加の力」が創る共生社会:市民の共感・主体性をどう醸成するか』という本も読んでみたけれど、最強に面白かったし、とても示唆に富んでいた。こういう分野に興味があるマニアックな人には、ぜひ読んでもらいたい良書です。オススメ!!

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NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

中村哲さんに頂いた言葉

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今日はアフガンで命を落としたペシャワール会の中村哲さんのことをずっと考えている。彼の訃報は悲しくてならないけれど、タリバンが「犯行への関与を否定する声明」を出すという普通なかなか起きない事態が、現地社会が中村さんやペシャワール会のことをどれだけ信頼していたのかを物語っている。同じ日本人として、本当に誇らしい。

たまたまではあるけれど、僕は昨年9月に中村哲さんの講演を聴き、その後、個別にもお話する機会を頂いたことがある。追悼の意も込めて、その時に印象に残った中村さんの言葉を、ここに書いてみたいと思う。
 
「僕はとにかく逃げ足が遅い。だから逃げ遅れて、いまもこうしてアフガンで活動をしているのだと思う」
 
「医師として1人1人を救うことは大いなる喜びだった。でも、灌漑事業で数千人を一気に助けられるのは存外の喜び。これ以上の幸せはない」
 
「実はアフガンでの活動に集中していて、自分の実の子どもが亡くなる瞬間に立ち会えなかった経験がある。でもその時も、自分のやっている事業によってアフガンの子どもたちの命が数千人救えているという実感があったので、それでいいと思えた」

「これからの時代、どんな人を育てていくべきか。誰か泣いている人がいたら、『どうして泣いているの?』と駆け寄ることができる気立ての良い子どもが増えてほしい」
 
「誰かに裏切られたと思っても、すべてを憎まないことが大切。その部分だけではなく、良い面もあると信じて、クヨクヨしないということが何よりも大切」
 
「ちょっと悪いことをした人がいても、それを罰しては駄目。それを見逃して、信じる。罰する以外の解決方法があると考え抜いて、諦めないことが大切。決めつけない『素直な心』を持とう」
 
「無理やりやってもダメ。悲壮感は十分な原動力にはならない。好きなことや、やめられないようなことを思い切ってやってほしい」
  
とにもかくにも、自分よりもアフガンの人々を愛することのできる人だった。こんな人はなかなか存在しないと、改めて思う。彼の遺志を少しでも良い形で引き継ぎたいと心底思う。

ご冥福をお祈りします。

(追記)
いま多くの人が「彼を殺した人のことを許せない」と言っているけど、なんとなく、中村さんは「まぁ、どうかアフガンの人たちを責めないで、ゆっくり見守ってあげてください」と天国でおっしゃっているような気がする。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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東アジア探索旅で感じたワクワク感

韓国、香港での1週間の滞在が終わった。

短い期間ではあったけれど、久々に右脳モードを全開にしながら、刺激に満ちた探索の世界に身を置くことができた。思えば、ここまで自由なスタンスで思索をしたのは下手したら創業期以来だったような気もする。そして、あの時に感じたゼロからイチをつくる高揚感とはまた違う、日本での8年間の活動の実績を土台にした探索の広がり感が、今の僕には最高に刺激的だった。

この感覚を忘れないうちに、今回何を感じたのか備忘録的に書き残しておこうと思う。個別な出来事を振り返るとあまりにも多すぎるので、特に自分がワクワクした感覚に絞って3点だけ。

1. 国境を超えたビジョンでの共鳴

今回の渡航のメインミッションは、奇跡的な巡り合わせで実現した、韓国語版の書籍の出版に合わせたトークイベントへの登壇だった。

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↑ソウルの社会的企業インキュベーションオフィスHEYGROUNDで行われたトークイベントの模様

今から1年ほど前、韓国人の学生20人くらいがオフィスに遊びに来てくれて、クロスフィールズの活動とその背景にあるビジョンについて話をさせてもらった。文化的な背景や社会構造が近いこともあってか、学生たちの反応は想像以上だった。終わったあとにも個別に質問をしてくれる学生があとを絶たなかったが、その中に日本語を勉強している学生がいたので、僕は自分の書いた本をプレゼントした。

後日、ペソンジンくんというその学生から「この本に書かれていることは韓国社会に伝えなければいけないと思いました。ぜひ僕にこの本を翻訳させてください」とメールが来た。僕は冗談半分でOKしたのだけど、それから半年くらいをかけて、彼は本当に翻訳を完遂するとともに、周囲の人たちを巻き込んでクラウドファンディングまでして、なんと最終的に韓国語での出版を実現させてしまったのだ。

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↑右側が韓国語版の拙著『내 일을 바꿔 내일을 바꾸다(仕事を変えて、明日を変える)』(小沼大地著・ペソンジン訳)

今回のトークイベントに集まったのは、その出版プロジェクトのコアメンバーたちと、クラウドファンディングでサポートをしてくれた100人くらいの人たち。これだけの人たちが、国境を超えてビジョンレベルで共鳴しているという美しすぎる情景を見て、僕はこの上なく幸せな気分だった。

やっぱり想いこそが人を動かして、社会を変えていく。
今回出会った韓国の友人たちには、そんなことを改めて教えてもらった気がする。

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↑今回の出版プロジェクトのコアチームのメンバーたちと。(前列左端がペソンジン)

また、これだけビジョンレベルで共感できる人たちがいる韓国という国で、クロスフィールズとして何かしらの事業を展開しないわけにはいかないなとも強く感じた。

今回、何かしらの協働ができないかということで韓国の複数の社会的企業と打ち合わせをしてきたが、多くの人たちが事前に本を読んでもらってくれていたこともあり、驚くほどスムーズに意気投合することができた。やはり本があると、想いの伝播スピードは圧倒的に早い。きっと遅かれ早かれ、彼ら彼女たちと一緒になってプロジェクトを仕掛けていくことになっていくんだと自然体で思う。


2. 同世代のライバル的な存在との出会い

今回、韓国と香港で合計10人くらいの社会的企業とNGOのリーダーたちと個別に面談をさせてもらう機会があり、そのうちの何人かからは、大きすぎるくらいの刺激をもらうことができた。その筆頭が、MYSC(Merry Year Social Company)という団体とそのCEOであるAbleだ。

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↑MYSCのメンバーたちと(左端がAble)

MYSCという韓国の団体は、僕たちと同時期に立ち上がった社会的企業だ。掲げているビジョンや使っている言葉も本当に近しくて、Ableからも「俺たちは生き別れた双子だったんだな」という言葉が出てくるくらいだった。

海を隔てた国に同志を見つけて非常に嬉しくもあったのだけれど、その一方で、実は悔しくもあった。近しいビジョンを掲げて同時期に立ちあがった団体として、僕の目には、彼らの方が活動をダイナミックに展開してきているように映った。また、もちろん規模だけで活動のインパクトは測れないし、アプローチの違いもあるにせよ、年間の予算規模でも組織の規模でも、彼らの方が1.5〜2倍は大きいという感じだ。そして何より、経営者としての落ち着きやチームへの接し方なども、僕よりも数段レベルが高いと感じてしまった。完敗、という感じだ。

でも、なんというか、こういう悔しさを感じるというのも、やはり幸せなことのように思う。こうしてライバル的な存在ができたことで、自分をさらに鼓舞することができる気がする。違う国で同じビジョンを掲げる凄い仲間と切磋琢磨できるというのは、なんというか、最高にエキサイティングなんじゃないだろうか。


3. 実績をベースにした新たな事業展開の可能性

同志でありライバルと出会って自分たちの未熟さを痛感しつつも、やはり自分たちが積み上げてきた8年間での実績は決して小さくはないと感じる場面もとても多かった。

香港をベースにしたGIFTCrossroads Foundationといった、ダボス会議に毎年招聘されているような国際的に著名な団体の代表とも、今回の滞在中にディスカッションをさせてもらった。突然のアポ依頼だったにもかかわらず、自分たちの活動実績とともに協働に向けて話をしたいと伝えると、忙しい中でしっかりと時間を取ってくれた。そして、僕たちの活動やこれまでの実績を大いにリスペクトしてくれた。

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↑GIFTのChandran代表と。

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↑Crossroads FoundationのCEO Davidと。

自分としても、以前はこうしたトップレベルのリーダーたちと会うと、どうしても「駆け出しの挑戦者として応援をされる」というスタンスで話をしてしまうことが多かった。が、今回は自分のスタンスとしても、より対等な立場で、どのような連携ができるのかを冷静にディスカッションできるようになっていることを実感できた。これは団体としても個人としても、結構な成長を感じることだった。

実際、今回様々な団体と議論した協働のアイデアは、どれもが実現したら素晴らしいものになると感じられるものばかりだ。正直、それを全部やってしまったら自分の身体がいくつあっても足りないわけだけど、帰国したらチームの仲間たちとしっかりと共有して吟味した上で、できることから一つずつ実現していきたいと心底思っている。


というわけで、これからも機会を見つけてこうした探索的な海外出張には積極的に出かけたいなぁと。
また明日からは、日本で頑張ります!!

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香港のインスタ名所、益昌大廈にて。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

至善館という大学院に通ってみた個人的な感想

ひっそりとではあるけれど、実は昨年2018年8月から大学院大学至善館という社会人大学院に通っている。2018年に開校した新しい大学院で、僕はその1期生として学ばせてもらっている。

至善館
至善館(しぜんかん)」というなんとも怪しい名前の大学院だが、英語で表現するとGraduate School of Leadership and Innovationとなるそうで、修士号としてはMBAが取得できる社会人向けの2年間のコースになっている。

そろそろ通い始めてから半年が経過しようとしているので、一度、ここまでの学びやここでの経験を整理してみたいと思う。ちょうど二期生の募集も始まるタイミングのため、「評判どう?」「実際いいの?」という問合せもチラホラ頂くこともあり、これからこの大学院で学びたいと思っている人の参考にもなればと、せっかくなので以下のような項目でそれなりにちゃんと書いてみたい。

①僕はなぜ入学したのか?
②実際どんな感じの大学院か?
③どんなことを経験し、なにを学んでいるのか?
④ぶっちゃけ満足しているのか?
⑤この大学院に興味を持った人へ

+++

①僕はなぜ入学したのか?

僕がこの大学院への入学を決めた理由は3つほどある。

1つ目は、新たなインプットの機会を得たかったということ。僕は20代の後半に起業をしてからアウトプット過多の生活をずっと続けており、一度ゆっくりと腰を押し付けて、今後の人生のための学び直しをしたかったというのが大きい。30代の半ばで本業を続けながら学び直しをできるというのが、とても魅力的だった。

2つ目としては、せっかく学ぶのであれば、尊敬できる人のもとで学びたかったということがある。理事長である野田智義さんは僕の座右の書の1つである「リーダーシップの旅」の著者であり、自分にとってはロールモデルと呼べる人の1人だった。この人が人生を掛けて設立する大学院で学べるというのは、自分にとって最高の機会だと直感的に思った。

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↑理事長の野田智義さんと、提携するIESE Business SchoolのFranz Heukamp学長

3つ目としては、この大学院が掲げるコンセプトに惚れ込んだというところがある(この理由で入学を決意した同級生は非常に多い)。この大学院は、既存のMBA教育に対してアンチテーゼを唱え、さまざまな矛盾に向き合うことを軸としている。西洋的なMBAの良いところは押さえつつ、それを東洋思想や哲学を中心としたリベラルアーツと融合するという挑戦。また、「テクノロジーの進展VS人間性の担保」、「Business VS Society」などといった様々なAntinomu(二律背反)に向き合う答えのない旅路。まさに、自分が7年間起業家として活動するなかで更に思考を深めたいと考えていたテーマで、このコンセプトに強く惹きつけられた。

②実際どんな感じの大学院か?

授業が行われるのは、基本的には1週間に2日間。平日の夜の時間帯の3時間と、週末どちらかの半日~終日というのが基本的な構成だ。

この授業への出席に加え、事前/事後レポートの執筆や課題図書、更にはグループワークなども多いので、当然ながらなかなかの負荷ではある。ただ、現役の起業家であり二人の子どもの子育て真っ最中の自分にもなんとかかんとか両立可能なコースではある。(無論、それは職場の仲間や家族の多大なる協力・理解のもとに成り立っているのであり、僕としては感謝の気持ちしかございません!)。

クラスは英語と日本語のどちらかを決めて入学することとなっており、僕は英語コースに在籍している。1期生は日本語コース・英語コースともに40人程度で、どちらのコースも外国人比率は3割程度という感じだ(日本語コースでも日本語が話せる外国人が多数学んでいて、多様性は一定程度担保されている)。

バックグランドとしては、大企業務めのビジネスパーソンが多い。ただ、官僚やフリーランス、僕のような起業家も各クラスに何人かずつはいるという感じ。個人的には、ここはもう少し幅広くなっていけばいいなぁと感じている。ちなみに年齢層は20代後半から30代後半で、34歳が平均年齢とのこと。MBAとしては年齢層は高めで、いわゆるExecutive MBAに近いカテゴリなのだと思う。

授業にはグループワークも多く、多くのクラスメイトと関係性の質を高める機会がある。ちなみに、いま僕が所属しているグループはブラジル人、スリランカ人、エチオピア人、日本人3人(帰国子女1人・純ジャパ2人)という構成。こういうメンバーで色々な議論をしていくのはなかなかタフだけど、気付きや学びも非常に多い。

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③どんなことを経験し、なにを学んでいるのか?

個人的にすごく良いなと思っているのは、パッチワーク式に色々な科目から選ぶのではなく、全員が同じ事業を履修しながら同時に学んでいくという形式だ(ただし、2年次以降は選択式の授業も増えるらしい)。そのため、すべての授業が関連性を持っていて、さまざまな角度で物事を捉える必要に迫られる。

たとえば、僕はこれまで2クールの授業を受けたのだけど、最初のクールでは「Accounting」と「Finance」とともに「What is Company for?(企業論)」という3つの授業が同時に進んでいき、会計や財務を学びながらも「企業は株主のものなのか?企業はなんのために存在しているのか?」ということをグルグルと考えさせられたりする。

2クール目はもっと激しく、「Science&Technology」で未来の社会を洞察しながら「System Thinking」でシステム思考のいろはを学びながら、「Capitalism」という授業で哲学をベースにしながら資本主義とは一体なんなのかを考え抜くということをさせられた。

つまりは、最先端の方法論やMBA的なベーシックな知識/情報に触れながら、それと同時に、哲学や東洋思想などといったリベラルアーツ系の深い問いを突きつけられるような構成になっているのだ。大学時代にろくに勉強をしてこなかった僕としては、今更ながら脳みそに汗をかくとはこういうことかと実感している感じだ。

また、こうした科目を受講していくことに加え、2年間を通して自分の価値観や軸、将来の展望について考え抜くSelf-Reflection系のプログラムが用意されている。正直自分はこういうプログラムは起業してからさんざん受けてきていたので舐めていたところがあるのだけど、このプログラムのファシリテーターがCTIジャパン創始者の榎本英剛さん(なんたる豪華さ!)で、改めて自分の知らなかった自分が発見できていることを実感している。

④ぶっちゃけ満足しているのか?

ここまで読んでもらってもお気づきかと思うけれど、結論としては、僕はこの大学院に入学して本当によかったと思っている。実は入学直後に自団体の経営で大きめのイシューが起こり、退学することを本気で考えたのだけれど、あの時に踏ん張っておいてよかったと心から思っている。(とはいえ、今後まだ何があるか分かりませんが…)

では、一体なにに満足しているのか。改めて突き詰めてみると、以下の2つの点かと思う。

本質的な問いについて突き詰めて考え抜く経験ができていること

いわゆるMBA的なスキルや知識を身につけることには僕はそこまで興味はなく(もちろんそれも有益だし重要なのだけど)、それよりも、ビジネスや社会の仕組みの源流にある思想や仕組みを突き詰めることができているのが大きい。

「行き過ぎた資本主義のあり方を変えたい」とか「企業が社会課題を解決するのが重要だ」といった考えを僕はずっと持っていた。でも、そもそも誰がどんな想いで資本主義というシステムを作ったのか、また、これからの社会システムとしては何が理想なのかといったことを正面から考えたことはなかった。

また、「企業とは誰のものか?」という問いに、「株主のものに決まってる」と会社法上の定義だけで答えていた自分が、いまは思想を持って「会社とは何なのか」に対して自分なりの軸を持った持論を日英で展開することができるようになれている。

少しずつではあるけれど、こうしてさまざまな事象に対して軸となる思想を持つことができてきていることで、NPOの経営者としても大きなブレイクスルーがありそうな予感がしている。個人的には、ビジネスパーソンだけでなくソーシャルセクターで働く人間こそこうしたリベラルアーツを学んで自分なりの思想・哲学を持っておくべきだと思い始めており、その点で自分はいかに足りないものばかりだったかということを深く反省する日々だ。

最前線で活躍する講師陣とぶつかり稽古をしながら学べていること

僕が昔通っていた国立大学の大学院との比較にはなるが、講師のなかにいままさに現場の第一線で活動している実践家が多いのは、非常に刺激的だ。

たとえば「System Thinking」の授業を担当しているのは、枝廣淳子さん小田理一郎さんというソーシャルセクターの世界では知らない人はいない実践者たちだ。また、世界的にも注目が高まる「Design Thinking」の授業を担当するのは、日本におけるこの分野の第一人者といっても良い株式会社BIOTOPEの佐宗邦威さんだ。彼はいま38歳だが、こうした最前線で活躍する若い実践者から約30時間(3時間半×8回)におよぶ薫陶を受けられというのは、贅沢この上ないことだと思う。なお、今後は平田オリザさんが監修する演劇のグループワークが控えていたりと、これからも様々な第一人者との対話が楽しみでならない。

そして、やっぱり何よりも贅沢だと思うのは、超一流の教育者であり起業家である野田智義さんという傑物に直接稽古をつけてもらえるということだ。僕が野田さんをロールモデルの1人としていたことは先に書いた通りだが、実際に入学してみて、この人は僕なんかが想像できないほどに教育者としても思想家としても怪物だということを、嫌という程に思い知らされた。この21世紀の吉田松陰とも呼べる人物とこれだけ濃密に時間を過ごせていることが、僕としては何よりの財産だと感じている。


・・・と、なんだか美辞麗句ばかり並べてしまったが、これはあくまでも僕の感覚であり、普通の人が懸念する点は沢山あるんじゃないかとも思う。たとえば、まだまだ日本でも世界でも無名の大学院であり、いわゆるネームバリューのようなものは全くない。なので、そうしたネームバリューが欲しい人には向かないかと思う。「まだまだ無名で知る人ぞ知るような学校だけど、むしろ自分が活躍することで名を上げてやる」くらいじゃないと、ダメかもしれない。

また、新設の大学院らしいバタバタ感も相当程度ある(笑)。授業の内容も当初とは結構変わるし、成績をどうつけるかも二転三転したりする。色々なプログラムが走りながら定まっていく感じだ。僕なんかはこういうアジャイルな感じが、一緒になって学びの場を創っているような感じでむしろ楽しいのだけど、ドッシリとした堅牢な感じを好む人にはかなりストレスになるかと思う。。。

⑤この大学院に興味を持った人へ

最後になったけれど、ここまで読んで至善館に関心を持ったという人は、ぜひ今度開かれる予定の説明会に足を運んでもらえたらと思う。詳細は以下から。

☆ 説明会の案内(English/日本語) ☆
※ ちなみに3/18(月)の説明会には僕も登壇することを予定しています

なお、こちらの入学案内を見てもらうと分かるのだが、学費はかなり高い。ただ、ソーシャルセクターの学生やその他一定の条件を満たす学生には結構な奨学金も出るらしいので(僕も実はその恩恵に預かってます)、ぜひ個別に事務局の方々に相談してみることをお勧めしたい。

僕としてはちょっと変わった人、特にソーシャルセクターの人に仲間に加わってほしいと思っているので、ぜひとも説明会に来てもらうとともに、2期生としてジョインして欲しいなと。2期生で入ってきた人とは1年間はキャンパスで時間を過ごすことになるので(僕が留年したら同級生になる可能性も...)、ぜひ我こそはという少し変わった方々、ご応募くださいませ!!

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小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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