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至善館への2年間の投資を評価してみる

早いもので、大学院大学至善館なる新設の社会人大学院に1期生として入学して2年間が経ち、あと少しで卒業という段階まで来た。少しずつこの大学院の存在も知れ渡ってきているのか、「ぶっちゃけ、至善館ってどーなの?」という問い合わせを個別にもらうことも増えてきた。

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せっかくなので、卒業を間近に控えたこのタイミングで、至善館への入学を検討している人向けに、僕個人がこの2年間をどう捉えたのかを書いておきたい。至善館のメインターゲットである企業勤めのビジネスパーソンに加え、僕のような起業家やNPO関係者にもぜひ参考にしてもらえたらとても嬉しい。

なお、入学して半年のタイミングでも大学院の概要や僕の入学動機あたりは別の記事にまとめたので、今回は総括的な内容に絞って書いていきたい。

①2年間の流れと学生生活はどんなものだったか?
②印象に残った授業トップ5は?
③最終的な学びはどんなものだったか?
④ずばり、2年間の投資はペイしたのか?

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①2年間の流れと学生生活はどんなものだったか?

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↑僕の在籍していた1期生英語クラス約40人の集合写真

2年間の流れをざくっと言えば、1年目は様々な分野の知見をインプットすることが中心で、2年目は一転して、自己を内省したりそれを形にしていくアウトプットが軸になっていた。

1年目はとにかく沢山の授業と課題があって、仕事や家庭とのバランスが本当に大変だった。平日の夜1回で1コマ(約3時間)の授業が入るのと、土日のどちらかに2-4コマ(6~12時間)の授業が常に入っていたという感じだ。毎回の授業に対して約1-2時間くらいの事前or事後課題があるのだけど、僕の場合これは基本的に授業がある日の早朝や深夜にやり切るようにした。つまりは、通常時については、詰め込めば授業がある日だけ大学院に時間を使うだけでも何とか乗り切れるという感じではあった。

ただ、2ヶ月おきくらいにやってくる、各授業で課される最終レポートやプレゼン(グループでの準備が必要)はかなり重い。僕の場合は平均すると各授業で5-10時間くらいの時間をかけていたように思う。中高生のときに味わっていた期末テストのプレッシャーとその開放感が、20年ぶりに生活のなかに戻ってきたような感じだ。

対して2年目は、授業はかなり減る。僕の場合は選択科目をあまり取らなかったこともあって、授業の量自体は、1年目の半分くらいだったのではないかと思う。ただ、2年目には少人数のゼミナール形式での個人プロジェクトが始まる。ゼミの中身はあとで詳しく紹介するが、この個人プロジェクトのプロセスは本当に濃密だった。至善館での学びを踏まえて自分が挑戦したいプロジェクトについて、9ヶ月かけて深めていき、最後はそれをスピーチ・プレゼン・論文の形でまとめていく。僕はこれには本当に全力を傾けたので、素晴らしい経験だったと同時に、本当に苦しいプロセスでもあった。どれだけ時間をかけたのかは、もはや分からない。

そして、これだけのことを全て英語でやるというのは、普段の業務でもある程度英語を使っている自分としても、かなりの負荷だった。こうして終わってみると大きな自信につながったものの、本当に大変だった。

改めて2年間を振り返ってみて、よくこれを事業経営しながらよくやったなと思う。でも逆に、僕のように小さな組織の事業経営にフルコミットしながらでも両立できる負荷のレベルだとも言えるかもしれない。

ちなみに、多くの学校と同じように、至善館でも2020年の3月頃からはすべてのプログラムがオンラインでの実施となった。もちろんリアルのコミュニケーションの醍醐味は捨てがたいものの、このあたりのスピーディーな対応は素晴らしく、Zoomの様々な機能を駆使して各教員が質の高い授業を行っているという印象だった。個人的にも、組織としてのこのあたりの対応からは、多くのことを学ばせてもらった。

②印象に残った授業トップ5は?

「全人格リーダーシップ教育」を掲げる至善館での学びは、他のMBAとはかなり違うものだ。その一旦を紹介するために、僕個人にとって印象的だった授業トップ5と、そこでの学びをごく簡単に紹介したい。

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その1 企業論(野田智義先生)
至善館の創始者・理事長である野田智義さんによる渾身の授業。「企業とはそもそも何なのか?」という骨太のテーマについて、あらゆる角度から検証を重ねていく。たとえば、「企業は株主のものなのか?」という問いには、Private EquityやNGOなど、立場の違うゲスト登壇者から様々な意見を聞きながら考えを深めていく。全24時間の授業が終わる頃には、これらの問いに対する自分自身としての持論を確立できるようになる。これはビジネスの世界にも身を置いている者として、やっておいて本当に良かったという経験だった。

その2 哲学(竹田青嗣先生)
西洋哲学の切り口から「資本主義とは何か?理想の社会システムとは何か?」について迫っていく授業。僕はこの授業を経験できただけでも、この大学院に来て良かったと思えるほどの内容だった。これまでも何となく「資本主義は間違っている」などと吠えていた僕だったが、資本主義について真面目に勉強したことはなかった。授業では、そもそも資本主義はどんなきっかけで何のために作られた仕組みなのかを、農耕技術が誕生した1万年前から遡って、多くの哲学者の理論とともに学んでいった。資本主義が人類に何をもたらし、そして、いまどんな構造上の課題を持っているのかについて、竹田先生の鮮やかな分析とともに考えを深める。資本主義という概念に対するイメージが、自分の中でまさに再構築されるていく時間だった。

その3 社会学(宮台真司先生)
メディアでも舌鋒鋭い発言で有名な宮台真司さんの思想や理論を、体系だって学ぶことができる貴重な授業。「なぜ現代人の感情は劣化してしまったのか?」という問いについて、宮台さんならではの鋭い洞察のもと、社会学のレンズで検証をしていく。いったいこの社会には何が欠落していて、どんな取り組みが求められているのか。その鍵は「ソーシャル・キャピタル」という概念にあるというのが宮台先生の答えなのだが、この考え方はNPO経営者としての自分の価値観に大きな影響を与えてくれるものだった。

その4 東洋思想(北神圭朗先生)
なぜMBAで東洋思想なのかと突っ込みたくなると思うが、これが東洋と西洋の融合を掲げる至善館の真骨頂とも言える。老子の思想や貞観政要などといった、西洋の発想とは全く異なる東洋の思想について、原典を読みながら学んでいく。正直、難解すぎて十分理解できたとはとても言えないが、それでも、西洋のロジカルかつ科学に依拠した考え方が全てではないということを知れただけでも、大きな気付きとなった。僕としては、これを機会に東洋思想については継続的に学んでいきたいと思っている。

その5 演劇(平田オリザ先生)
以前から尊敬していた平田オリザさんによる全4回の演劇の授業。日本語クラスと英語クラスの合同で、80人が10チームくらいに別れて英語劇で競い合うというもの。平田オリザさんご本人から指導をされながら多国籍の学生で劇を作り上げるプロセス自体も忘れ得ないものだったし、「演劇は民主主義を守るために存在する」という平田オリザさんの哲学の一端を講義の中で知れた素晴らしい時間だった。

番外編 中村哲さんゲスト講話
至善館では、授業とは別に「フォーラム」という外部ゲストを招いての講話が定期的に開催される。僕の在学中にも、サントリーの新浪剛史社長や、逮捕直前のカルロス・ゴーンさんといった著名人を含む多くのゲストが来てくれた。そして、僕の人生の中でも重要な機会となったのは、2019年に亡くなる約1年前にペシャワール会の中村哲さんの講話だ。3時間にわたる講演を伺うとともに、終了後には個別にお話する機会も持たせて頂けた。この時頂いた言葉は、生涯忘れないと思う。(なお、この時に中村哲さんに頂いた言葉は別のブログ記事にまとめさせてもらった)

以上、僕の独断と偏見で選んたトップ5の授業と番外編について紹介した。当然ながら学生によって好みは違うが、周囲の学生と話をしてみても、至善館の強みであるリベラルアーツ系の授業が印象に残ったという声はやはり多い。

この他にも、僕の印象に残っている授業は数多い。デザイン思考やシステム思考、ネゴシエーションなどといった授業を通じて発想のフレームワークを増やせたことは、自分の事業を進める上でも即座に活きた。また、実は落第しかけたのだけれど(笑)、AIやプログラミングについて学習する授業は、これからの人生には必ず活きてくると思う。そして、これもなぜMBAでという感じだが、大阪府特別顧問の上山信一さんによる公共政策の授業は迫力があって最高に楽しかった。

一方、戦略論や会計の基礎知識、プレゼン演習などといった、いわゆるMBAらしい科目もある。特に戦略論などはハーバードの人気教授を客員教授として招聘する気合いの入れっぷりだったが、正直、僕個人としてはこのあたりの授業はそこまで印象に残らなかった。ただ、MBAらしい授業こそ学びが多かったと振り返る学生も多いので、やはり学生によって印象は大きく違うのだと思う。

③最終的な学びはどんなものだったか?

上で挙げたような授業それぞれでの学びも十分に大きかった。ただ、それぞれの授業をぶつ切れに学ぶのであれば、各授業の著者の本を読めばいいのかもしれない。そうではなく、至善館での学びに価値があるのは、それらの学びを統合して形にしていくプロセスにあったと2年間を振り返って思う。

最初に書いたように、2年目の後半には、個人プロジェクトという形で至善館での学びをアウトプットすることが求められる。アウトプットのプロセスは、CTIジャパン創設者である榎本英剛さんのファシリテーションにより、数ヶ月かけて自己理解を深めていくことから始まる。かなり恥ずかしい内省ワークの数々をやっていくのだが、多国籍の学生との対話も踏まえ、自分の価値観や人生のビジョンを言語化していくプロセスはこの大学院ならではのものだと思う。

そして、いよいよ至善館での学びや内省の結果を踏まえ、それを事業プランへと落とし込んでいく。これを、卒業までの約9ヶ月くらいをかけて、少人数のゼミナール形式でやっていくわけだ。

僕は運良く希望が通り、枝廣淳子さんのゼミへ。NPOの世界では知らない人はいない、環境活動家でありシステム思考の第一人者だ。彼女に文字通り、みっちりと稽古をつけてもらった。普段は実務家として勢いでごまかしてしまうことが多い僕なのだけど、枝廣さんにはいつも一瞬で論理の矛盾と裏付けの弱さを指摘された。それが悔しかったこともあり、人生で初めてなのではというくらい、沢山の理論書を読むことになった。本当に社会の仕組みを変えたいと思うのであれば、やはり実践だけではダメで、しっかりアカデミックな理論も持っていなければならないと痛感するプロセスだった。

ゼミでの時間は、いつも濃密だった。ゼミのメンバーは5人で、僕以外はイタリア人・ブラジル人・マレーシア人・インドネシア人という多国籍なゼミだった。彼ら・彼女たちから多様なインプットの数々をもらえたのは、非常に大きかった。自分の思考がいかに日本人的で、時として傲慢かつ一面的になってしまうのかを教えてもらえたように思う。

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最終的には、個人プロジェクトをスピーチ・プレゼン・論文の形ににまとめていく。なお、いつか対外的にも発表しようと思うけれど、僕は「共感(Empathy)」をテーマにしたかなり野心的なプロジェクトを立ち上げる構想をじっくりと練り上げた。最後の論文は、英語で1万ワード以上にも及んだ。

振り返ってみて、僕がこのタイミングで大学院に入学した最も大きな理由は、起業家として10年目となるこのタイミングで、改めて「自分の内なる声」を聞くことだった。

そして、これだけ多くののインプットを豪華な講師陣からしてもらい、それを枝廣先生に伴走してもらいながら、思い切りアウトプットとして吐き出した。最終的なアウトプットを振り返ってみて、もちろんまだまだ改善できる点もあるかもしれないけれど、それでも、間違いなく、いまの自分のベストを出し切った感覚がある。

起業して以来、ある意味では、社会からの期待や団体の代表としての立場でいつでも物事を考えていた。でも今回は、そうした立場から完全に自由になって、自分自身の内なる声をしっかりと聞き切ることができたという感覚だ。この感覚に納得感を得られたことが、僕にとって最大の収穫だったと思う。

今回アウトプットしたことは、間違いなく、僕がこれからの10年間を生きる上での新たな道標になってくれると信じている。

④ずばり、2年間の投資はペイしたのか?

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さて、改めて、至善館で過ごした時間はペイしたのだろうか?

振り返ってみて、本当に大きな投資だったと思う。正直、仕事面では大きな迷惑をチームにかけたし、この2年間は事業上のアクセルを十分に踏み切れなかった部分もある。また、家庭との時間も犠牲になった。2人の子どもたちと過ごす時間は減ったと思うし、特に奥さんには大きな負担をかけてしまった。

小さな組織の経営者として、当然ながら、事業上の危機もある。正直、2度ほどバランスを崩して本気で退学しようと考えたタイミングがあった。それでも、家族や同僚に支えてもらって、なんとかしてやり切った。周囲の応援には、感謝しかない。

それだけの大きな投資をしたわけだが、結論としては、僕としては、投資に十分に見合う学びを持ち帰らせてもらったと思っている。

やはり、一度何かしらの経験をして、そこでの成功体験や失敗体験から自分の軸をある程度持った段階での学びには、意味が大きい。一度できた軸を壊し、それをもう一度強くするような、そんなプロセスだ。僕が今回経験したのは、いわゆるリカレント教育というものだったと思うが、まさに、その意義を痛感した。

ただ、すべての学生が僕と同じような感覚を持っているかと言うと、正直、そうではないと思う。個人的には、やはり何かしらの強い職業経験と自分自身の思考の軸を持っていることが、ここでの時間を有意義に過ごすことの必要条件だと思う。また、この記事を読んでもらったら伝わるように、相当な独自色のあるプログラムだ。当然ながら、好き嫌いがあると思う。

それから、「アジャイルなプロセスは嫌い」という人も、2年間を有意義に過ごすのは難しいかもしれない。出来上がった完全な教育プログラムを期待する人から見れば、まだまだ「現在進行系で進化中のプログラム」という印象は強いかと思う。実際、1期生のフィードバックをもとにして、2年目から教授が入れ替わったりプログラムの編成が大きく見直されたりしているようだ。ある意味では、こうした不完全さも許容しながら、自ら学びを深めていこうとすることが、大事になると思う。

+++

以上、長々と書いたけれど、僕はこの至善館という場にとても感謝しているし、多くの人に自分が得たような学びを得てほしいと心から思っている。そして、至善館をさらに良い場にして行きたいとも思っている。

その意味では、僕個人としては、生徒の構成比に占める大企業のビジネスパーソンの比率があまりにも高すぎると感じている。だからこそ、僕のような起業家やNPOの世界で働く仲間にこそ、ここで学んで欲しいと思う(僕も利用したが、NPOの人や起業家には奨学金枠もあるので、ぜひトライして欲しい!)。

この文章を読んだ人が、ぜひ後輩として入学してくれることを祈って。

追記;
ちなみに、英語でも振り返りを書いてみたので、必要な人はこちらをご覧下さい!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

Reflection of my two years at Shizenkan University

In this post, I would like to write about my experience at Shizenkan University, a newly-established graduate school in Japan. I joined this school as a first batch student in 2018 and, hopefully, am about to graduate very soon.

至善館
As there is very little information available, especially in English, I believe writing this kind of memo on my personal experience might be valuable for those who will consider joining this school. Yet, I don’t think I am the best person to write this post since I am a Japanese student who cannot fully understand the perspective of non-Japanese students. Please keep this in mind while reading my post.

Now, let me write my opinions following the agenda below.

1. What is Shizenkan?
2. Why did I join?
3. Course overview
4. My overall impression
5. Possible concerns

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1. What is Shizenkan?

Shizenkan is a Tokyo-based graduate school focusing on leadership and Innovation where you can obtain an MBA. The concept of this school is rather unique and its emphasis on liberal art subjects such as western & eastern philosophy, sociology, and religion is no doubt exceptional.

The course is a 2-year-long part-time program for young professionals from various sectors in their late 20s to early 40s. Normally, we have one-weekday class (3 hours long) and between one to three weekend classes (6-12 hours long). In addition to the attendance to these classes, we are requested to do pre/post assignments and to submit mid/final reports or make group presentations with other students.

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↑Classmates at the English class

Indeed, it is really a heavy burden for full-time workers. However, I think I have proved that even an entrepreneur managing a start-up organization with two small children is able to handle it. (I can’t thank enough those who have been supporting my challenges, especially my team members and my family)

This school has roughly 80 students in one cohort. There is both a Japanese course and an English course (I belong to the English course) and each course has 40 students. Both of the courses consist of roughly 70 percent Japanese students and 30 percent non-Japanese students from many nationalities.

Concerning students’ backgrounds, they mostly come from Japanese large corporations. Although there are some bureaucrats and entrepreneurs, I think Shizenkan needs to enhance diversity by increasing the number of students with unique backgrounds.

2. Why did I join?

I am a Co-founder and CEO of Cross Fields, which is a Tokyo-based not-for-profit organization aiming to bridge the business sector and the social sector. Since its foundation in 2011, I having been managing this organization to make a difference in society as a social entrepreneur.

So, what brought me to engage in Shizenkan as a student? Let me share with you a couple of reasons.

First, I just wanted to acquire new inputs and insights. As I had been making outputs for seven years since I became an entrepreneur, I needed time to sit down and update myself by obtaining new inspiration and reflecting on my experience.

Second, I wanted to learn from somebody who I respect a lot. Dr. Tomo Noda, Founder & Chairman of Shizenkan, is one of my role models and known as an author of a legendary book on leadership, “A Journey of Leadership”. Before the establishment of Shizenkan, he taught management strategy at INSEAD France (gained Best Professor award for three years in a row) and then started an initiative in Japan to cultivate senior management leaders of Japanese corporations. When I heard about the concept of Shizenkan for the first time from him, I intuitively thought that it must be the most exciting experience to learn at the school that Dr.Noda devotes his life to.

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↑Dr. Tomo Noda

Last but not least, I was fascinated by the philosophy of this school. Shizenkan questions the value of existing business schools in the world and envisions creating an alternative leadership education platform from Japan. While grasping the beautiful parts of Western MBAs, Shizenkan tries to integrate them with liberal arts such as Eastern Philosophy or Sociology. I have truly empathized with Shizenkan’s attitude of trying to overcome the antinomy of “East vs West”, “Technology vs Humanity”, and “Business vs Society”. This is exactly what I have been questioning while having been engaged in the activities of Cross Fields, so this message attracted me extremely powerfully.

3. Course overview

Reflecting on the flow of the two-year course at Shizenkan, the first year mainly focused on input while the second year focused more on output.

The first year (input part)

Concerning the input programs, Shizenkan has various subjects. The variety of classes ranges from classical MBA subjects, such as Strategy, Negotiation, and Communications to the latest subjects like Design Thinking or AI programming. Yet, the strength of Shizenkan can be seen in its liberal arts subjects, such as Philosophy, Sociology, Religion, and so on.

What I like about the Shizenkan courses is its consistency. Most of the subjects are interrelated with each other and we can study similar topics from different angles. For instance, we studied “Accounting”,” Corporate Theory” and “Western Philosophy (The theories on Capitalism)” in the same semester. While studying practical accounting, we were requested to answer the fundamental questions like “Who owns a company?” or “Why did human-beings select Capitalism as our socio-economic system?”

The learning here is not receiving basic knowledge or honing simple skillsets. Instead, it is always a combination of getting to know the fundamentals of classic theories and asking yourselves to develop your own theories in use.

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The second-year (output part)

In the second year, an output focusing program started with a reflection workshop facilitated by Professor Hide Enomoto, a founder of CTI (The Coaches Training Institute) Japan. Throughout some of the deep reflection exercises with our diversified classmates (some of them were embarrassing ones…), we crystalized our values and life missions.

Then, we moved on to nine-month-long seminar-type learning. A group of five students was formed as a seminar and one professor was assigned to each seminar. In my case, I had seminar classmates from Brazil, Italy, Malaysia, and Indonesia and had Professor Junko Edahiro, a very famous environmental activist specializing in the system thinking approach, as a seminar faculty leader.

Together with my seminar classmates and faculty, I narrowed down my problem awareness and transformed it into a business idea. Discussing with students from different backgrounds and receiving to-the-point inputs from Professor Edahiro has been extremely meaningful and made productive moments.

At the end of the seminar, every student delivered a 7-minute speech on their vision and 15-minute presentation on their business scheme. Also, we needed to submit a final report. This process was extremely valuable for me and I was able to come up with a new business model that I really want to achieve as my next endeavor.

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↑ My seminar group members

4. My overall impression

As I have stated, I invested a substantial amount of time in Shizenkan. Yet, I strongly think that all of my investments and efforts have well paid off. Let me touch upon several highlights of what I have experienced through two years of the Shizenkan experience.

Exploring your own answer to fundamental questions

Honestly speaking, I didn’t have any interest in acquiring MBA-ish skills. Instead, I wanted to explore the essence of the economic system or the philosophies that created the current societal system.

Although I tended to insist that I want to change the way the current Capitalism system works, I didn’t have a chance to study thoroughly about the societal system. In this sense, the experience of getting to know who created a blueprint of this societal system or identifying structured problems of the current system has been truly meaningful for the rest of my life.

After experiencing various liberal arts subjects at Shizenkan, I was able to build up my own theory toward various topics. I believe that having a personal philosophy based on the learning of liberal arts would be extremely important in the coming age not only for business leaders but also for entrepreneurs or people working for the social sector.

Learning from and discussing with frontline practitioners

The professors at Shizenkan are seldom pure academics, but most of them have a strong business background or are engaged in on-going challenges. You can find more practitioners among professors than any other university in Japan.

Professor Junko Edahiro, my seminar faculty, is a good example. She is a fairly famous figure in the social sector and has been working as a grass-roots environmental activist. Also, some professors have previous experience managing multinational corporations as CEOs. An unforgettable experience for me was to have an acting class from a very famous theater director Oriza Hirata in the communication group work.

Lastly, the most precious experience for me was the direct interaction with Dr. Tomo Noda, Founder of Shizenkan. Since I joined Shizenkan, I reaffirmed the power of his teaching capability and the profoundness of his philosophy. In fact, he appeared in most of the liberal art subjects and gave his interpretations on various topics. Spending time with this exceptional educator and innovator was no doubt a valuable experience.

Transforming profound learnings into real practice

In most of the cases, learning liberal arts tends to end up not creating anything practical. However, Shizenkan students are somehow forced to create a practical project based on the learning here. This process is extremely tough, but it makes a big difference.

To me, the process of creating output was the most valuable part of Shizenkan. Moreover, what is important for me is that I am feeling that I did my best in this process. As I dedicated all of my energy, the final deliverable (speech, presentation, and report) was the crystallization of my entire learning at Shizenkan. I believe it will function as a compass that guides me in the right direction when I am lost.

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5. Possible concerns

I think I have written too many positive comments about Shizenkan. However, mine is just one of the opinions. The impressions are of course different from student to student. To make some balance, let me share possible concerns for those who consider joining this unique school.

As I have stated so far, the lessons you learn here are quite different from normal MBA programs. Hence, the flavor of the programs is said to be so-called love it or hate it. If you are a person who wants to know the basic business skills or knowledge, this might not be the best school for you.

Both positively and negatively, the identity of this school is set based on the Japanese perspective. Although Shizenkan has a global perspective and tries to include various types of case studies, many professors utilize the perspectives or contexts that are based in Japan.

Also, the name recognition of this MBA program is almost nonexistent at the moment. If you are a person who cares about the status of a global brand, this is not a suitable school. It might be a school for those who aspire to raise recognition of this school by creating a distinctive performance on their own upon graduation.

Lastly, I don’t recommend this school to those who don’t like an agile process. For those who expect a robust and perfectly designed program, this school will give the impression of a program extremely in development. Shizenkan is like a start-up organization. I hear that Shizenkan is making an effort to improve the quality of the programs based on the feedback from students. If you are a person who can enjoy this kind of agile environment, you might be a perfect candidate.

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Thank you for reading such a long post. I hope this will help you to better understand what Shizenkan is.

As a person who loves the concept of Shizenkan, I would like people who can share the common vision to join us. I am personally waiting especially for people with an entrepreneur background or somebody working in the social sector to join Shizenkan. (There is a scholarship program available for these people!)

Co−Founder and CEO,
CROSS FIELDS
Daichi Konuma

Interdependence(『お互いさま』)の時代

1月末、僕はインドで1週間を過ごした。都市部や農村部で活動するNGOや社会的企業を訪問したのだけれど、現場で活動するリーダーたちは、みな哲学者のような顔つきで、口を揃えて同じことを語っていた。

「最も大切なのは、人々が尊厳(Dignity)を持つことだ」

経済的な豊かさや教育レベルを高めるよりも、尊厳の方が圧倒的に重要なのだと。そして、人々が尊厳を持つために必要なのは、「支援する側」と「支援される側」に分けてしまわず、「互いに対等に支え合っている実感を持つこと」なのだと。

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↑バラナシ郊外の農村で出会った男性

自分がサポートを受ける立場であると同時に、誰かに取って必要とされる存在であることが、人に尊厳を与える。逆に、人々から尊厳を奪ってしまっては決してならないというのが彼ら・彼女たちの共通の想いだ。

「人々が互いに支え合うInterdependenceを実現したコミュニティづくり」

これはインド全土の農村部で活動を展開する高名な社会的企業Drishteeの思想だ。驚いたのは、インド農村部においても過疎化や高齢化の影響で相互の助け合いがなかなかできなくなっていて、彼らがテクノロジーを使ってその問題を解決しているという事実だ。

Swapna
↑DrishteeのVice President、Swapna氏

たとえば彼らが開発したMIRI(Made in Rural India)というスマホ上で機能するアプリでは、Peer to Peerで農村部の農家と都市部の家庭をつないで助け合いのコミュニティを構築しようとしている。

MIRI
↑MIRIのインターフェイス

テクノロジーが、利便性や生産性のためではなく、コミュニティのつながりを維持するために使われている。さらに言えば、プロダクトやサービスを届けるのはあくまで手段で、「お互いさまのコミュニティづくり」という思想と哲学の実現のために、すべての事業が設計されているかのようだ。

すごい。これこそがビジネスの未来だ。
僕は大興奮のうちに、帰国の途についた。


それから3ヶ月が経って、世界は一変した。文字通り。

でも、あの時インドで感じた未来は、期せずして、もっと早く訪れそうな気がしている。新型コロナウイルスという世界共通の危機や不安に瀕して、どんな人も支え合わないと生きられないほど個が弱くなっているからだ。

たとえばいまの自分は、3ヶ月前の自分よりも圧倒的に弱くなっている。経営者としてもそうだけれど、父親・夫としても。

保育園や学童保育が利用できなくなったことで、共働き家庭の我が家は一気にバランスを崩した。団体経営も危機的な状況のなか、6歳と3歳の子どもたちのケアを平日も含めてやらなければいけないことは、実質、不可能に近かった。僕はギブアップをして、あらゆる方面にSOSを出した。

結果、有り難いことに色々な人たちがアドバイスをくれ、救いの手も差し伸べてくれた。保育園が追加のサポートをしてくれると申し出てくれたし、両親や妹も子どもたちを週の何日か預かってくれることになった。職場のメンバーに相談して、僕は週のうち2日間は半日の休みを取って子どものケアに専念させてもらうことになった。さらには、同僚の奥さんがベビーシッター役を買って出てくれるとも言ってくれた。本当に、感謝しかない。

いま僕は、こうした周囲の優しさに全面的に甘えるという決意をしている。ある意味での、覚悟も持って。もしかしたら、お金で解決する道もあったかもしれない。ベビーシッター利用には国の補助金もつくし、民間のサービスを頼った方が各方面と調整したりする面倒だって少ない。それに、ちゃんとしたサービスではないので、サポート体制も安定はしていない。

でも、インドでの記憶が残っていることもあってか、僕は思い切り支えてもらうという決心をした。自分自身は僕の持ち場で他の誰かに貢献しつつ、一方で、困っていることは誰かに全力で頼るという、お互いさまのつながり。その方が、このコロナという危機を力強く乗り越え得られそうな気がしたし、幸せに日々を生きられると思ったからだ。

実際、ここ数週間をそんな感じで生活してみると、大変ではあるけれど、間違いなく以前よりも生活が充実している感覚がある。周囲の人たちとのつながりがより深く濃くなったし、それを幸せに感じている自分がいる。

というわけで、僕は言いたい。

ぜひ、コロナをきっかけに、もっと互いに頼り合う社会をつくろうと。便利や安心ももちろん大切だけれど、それ以上に、人と人が支え合うつながりを大事にしていこうと。弱さを認め合い、でも、弱さがある人を「弱者」だと決めつけず、それぞれが互いに支え合う関係性をつくっていこうと。

事業者は、そんな「お互いさまのつながり」を強めるためのサービスやビジネス、テクノロジーをどんどん作っていこう。僕たちNPOも、そんな観点から事業を見直して、これを機に、どんどん「お互いさま」の社会をつくってしまおう。

きっとこうした営みこそが、アフターコロナの素晴らしい未来をインドでも日本でも創っていくんだと僕は思う。

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↑ガンジス川のご来光

(写真提供:笹島康仁)

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

社会課題大国インドで起きる、ソーシャルイノベーションの2つの潮流

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2年ぶりにインドを訪問し、デリーとバラナシでとても濃い世界に浸ってきた。本当に良い時間で、前回の訪問とはまた違う、さまざまな学びがあった。

1週間という限られた滞在ではあったけれど、NGO・社会的企業・投資機関など7団体のリーダーたちと対話をするとともに、3団体の活動現場を訪問することができた。個別の訪問記録も書きたいところだけど、全体として印象に残ったことに絞って、2回に分けて書いてみたいと思う。

前編は、社会を良くするための2つの潮流について。

社会課題大国と言われるインドは、社会課題を解決する動きでも世界で最先端を行っていると僕は思っている。そんなインドで、今回は2つの異なる力強い潮流を感じたように思う。いつもながらかなりマニアックな内容になるけれど、それぞれ、書いてみたい。

1. 社会性の高いスタートアップを育むエコシステム

日本でもメディア露出が増えているインドのベンチャーキャピタル(以下、VC)にAavishkaarという組織がある。社会課題解決を志向するスタートアップに絞った投資を行うなかで10億ドルの資産を運用する、世界でも例を見ない規模のインパクト投資機関だ。

今回はこのAavishkaarのパートナーと、その投資先であるGoBOLTというスタートアップの経営陣と対話をした。GoBOLTはマシーン・ラーニングを活用した物流の最適化を目指しており、これからIPOを目指す非常に勢いのあるスタートアップだ。

GoBOLTのビジネスモデル自体もとても将来性がある先進的なものなのだが、ここで注目したいのは、これからIPOを目指す段階のスタートアップが、財務的なKPIだけでなく、社会インパクトのKPIを強く意識をしながら経営を行っているということだ。彼らのプレゼンを聞いていると、売上やトラックの所有台数の話と同時に、それ以上に、雇用するドライバーの生活がどれだけ向上したかに本気であることが伝わってきた。

日本でスタートアップの経営者と話をしていても、社会インパクトに対する意識が強い経営者はとても多いと思う。ただ、一方で「いまのGrowthステージでは投資家のプレッシャーも強くて、正直、社会インパクトとか言ってる余裕ないんだよね」という話をよく耳にする。VCなどからの短期的な財務面のプレッシャーが強く、長期的に追いかけざるを得ない社会インパクトは意識しづらい環境があるのだと思う。

では、インドではどうなのか。僕は、日本とは逆の動きが起き始めていると感じた。Aavishkaarをはじめとした社会性の高いVCがスタートアップに働きかけ、早い段階から社会性を持つよう経営者にプレッシャーを与えているのだ。今回話を聞かせてもらったGoBOLTのCOOも、「Aavishkaarから投資を受けたことで、経済性と社会性のバランスを取りながら経営をすることに対して意識が向かっている」と語っていた。

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↑AavishkaarのパートナーTarun氏

日本においても機関投資家を中心にESG投資の文脈が盛り上がっており、上場企業に対しては社会性を意識するように働きかける動きが活発化している。一方で、スタートアップに対する投資の動きにおいては、こうした流れはまだ限定的だ。いまスタートアップでの不祥事が世界的に広がっているなかで、日本のVCにもAavishkaarのようなプレイヤーが現れてくることを期待したい。

ちなみに、Aavishkaarのパートナーは、僕のようなもともとNGOの世界にいる人間には耳が痛い話も言っていた。

「もともと社会性の高い経営者に、事業をスケールさせる能力を教えるのはとても難しい。一方で、事業をスケールさせる能力のある経営者に社会性を教えることは可能なことだ」

ぐうの音も出ない言葉だが、その通りなようにも感じる。。。その意味でも、VCがスタートアップ経営者に新しい形でのプレッシャーを与える意味は大きいように思う。


2. 新しい価値観の投げかけに力を入れるNGO

上に書いたように、特にインドにおいては、テクノロジーを駆使したスタートアップが社会課題の解決を大きなスケールで推進する動きが急速に加速している。そうしたなか、NPOやNGOが社会課題を解決するプレイヤーとしての存在感を落としているかと言うと、実はそうではないようだ。

今回訪問した団体に限ってみると、僕の印象としては、インドで活動する骨太なNGOたちは、事業のスケールアップを目指すよりも、世の中に新しい価値観を提示することに力点をシフトさせようとしているように思える。

たとえば今回対話させてもらったGoonjというインド最大規模のNGOの創業者Anshu氏は、もはや宗教家なのではないかと思うほど、独自の思想を深め、その哲学を雄弁に語ってくれた。彼だけでなく、他のNGOのリーダーたちも哲学レベルの力強い信念を掲げていて、それぞれの活動にはその思想が細部にわたって体現されていた。むしろ、現場での活動をツールとしながら、新しい価値観や哲学を社会に対して発信しているという印象を持った。

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↑Goonjの創業者Anshu氏

スタートアップが資本主義の仕組みのなかで課題解決を進めていくなか、ある意味では、「既存の社会システムや価値観を覆すような新しい物事の見方」を提示することこそが、現場に最も近い位置にいるNGOの新たな役割だと定義され始めているのかもしれない。

では、インドのNGOでは実際にどのような価値観が語られているのか。それぞれの団体が独自の哲学を掲げているように見えて、そこには共通項があるように僕は感じた。「Dignity」と「Community」という2つが、通底するキーワードだったように思う。

Dignityとは、日本語では「尊厳」を指す。貧困状態にいる人たちが生計を立てられるようになることで、自分の人生に対してOwnershipを持てるようになることだ。でも、彼らが語るDignityはそこだけに留まらない。「支援を与える」「支援を与えられる」という二項対立を超えて、すべての人がそれぞれの存在を人間として尊重し合える関係性を持てるようになることが、いま必要になっているのだと言う。

そして、Community。インドでも、都市部を中心に西洋的な個人主義(Individualism)が広がっていて、それに抗うことが大切だという考え方だ。日本をはじめ先進国が辿ってきた、コミュニティが分断されて個人主義に支配された状態を、どのように避けていくのか。どのようにして経済発展とあたたかい社会のつながりを両立させるのかが、大きなテーマになっているようだ。

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↑インドの農村に住む子どもたち

ちょっと僕にはこれ以上言語化できないものの、このような活動に通底した思想が、インドのNGOには横たわっているように感じた。なお、僕が驚いたのは、ここで語られている内容が、日本の文脈においても非常に重要なテーマであるという点だ。

Leap Frog現象という言葉は、一般的に「新しいテクノロジーの活用が途上国で先進国よりも速いスピードで進むこと」を指す。だが、ある意味では、テクノロジーのLeap Frogが進むなか、社会システムや価値観においても、途上国が一気に先進国よりも先に進んでいっていく時代に入っているように思える。


さて、長々と書いてしまったが、インドにおけるソーシャルイノベーションは、2つのレイヤーで異なる動きが進んでいっているように思えた。この2つの世界観から、日本が学べることは多いように思う。

後編では、インドにおいてテクノロジーがどのように社会を変えているのかを書いてみたいと思う。ここまで読んでもらったマニアックな方々は、どうぞお楽しみに。

(写真提供:笹島康仁)

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

二人の偉大な先人がこの世を去った2019年

少し遅れてしまったけれど、2019年の振り返りを書いておきたい。

2019年もまた、個人的にも色々なことがあった年だった。ただ、1年間を振り返ってみて最もインパクトのある出来事としていま思い出されるのは、やはり緒方貞子さん中村哲さんという国際協力の世界で活躍した2人の偉大な先人がこの世を去ったという事実だ。年末年始に改めてお2人の著作やドキュメンタリー映像などを見直す機会もあって、改めて、その功績の大きさや力強いリーダーシップにはただただ圧倒された。

お2人と同じ世界で仕事をする人間として、改めて、これからの時代をどのように生きていくべきなのかを、真摯に考えなければいけないと強く思っている。

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緒方貞子さんの功績と素晴らしさは、本当に数多くの視点から語ることができる。ただ、勝手に語らせてもらえば、彼女の真骨頂だったのは、現場主義を貫きながら、組織の論理を超えて巨大組織をあるべき方向に向かわせる大局観だったのではないだろうか。

UNHCRとJICAというある意味では巨大な官僚組織のなかで、トップとして人の血の通った意思決定をしていくというのは、僕なんかにはとても想像できないような困難な道だったはずだ。人間に対する優しさと厳しさの両方を持ち合わせた彼女の視線と行動力は、この世界に生きる身としては、少しでも継承していかなければいけないと強く思う。

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中村哲さんの残した印象的な言葉は以前のポストにも書いたけれど、彼が傑出していたのは、現地の人々に徹底的に寄り添う姿勢と、弱い立場に置かれた人たちに対する絶対的な優しさだった。

そして、中村さんが同時に持ち合わせていた大胆な発想力と行動力とが、60万人の人々のいのちを支える大規模な用水路を完成させるという偉業を成し遂げさせた。今回の事件に対するアフガニスタンの人々の反応を見ていると、これだけ途上国の現地社会から尊敬され愛された日本人はいないのではと思うほどだ。


お2人と仕事をしたこともない僕なんかが語るのもおかしな話だが、お2人に共通していたのは、前例や常識に囚われず、自分が人間としての心で感じ取ったことを堂々と発言し、大胆に行動に移していく姿勢だったのではないだろうか。そして、スタイルや役割はそれぞれ違えど、その姿勢と強い意志とが現場での大きな結果へとつながっていったのだと思う。

お2人に憧れる形で国際協力やNPO/NGOの世界に飛び込んだ若者たちは数知れない。緒方貞子さんの存在があったことは僕が国際協力の道に進んだきっかけの1つだったし、中村哲さんのようなカッコいい草の根の活動をされている方がいるという新鮮な驚きが、僕がNGOの世界にはまっていく要因だった。

2020年からのこれからの時代、お2人は残念ながらもう生きていない。ある意味では、これからは自分たちの世代こそが、次の世代に対して背中を見せていく番になっていく。まだまだ青二才だけれど、自分自身も、お2人が切り拓いた道とその視点の高さをしっかりと受け継ぎつつ、お2人のようなぶれない軸を持って、これからも前に進んでいきたいと思う。

明日からはいよいよ2020年の仕事が始まる。僕は僕の現場で、まずはしっかりと価値を出していきたい。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)