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ルワンダが「アフリカの奇跡」と呼ばれるに足る3つの理由

1月20日から1週間かけ、日本企業の役職者20人の方々とともに、アフリカはルワンダを訪問してきた。

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25年前に起きたジェノサイド(大虐殺)の悲劇を乗り越えて安定した経済発展を遂げつつあるこの国は、日本では「アフリカの奇跡」や「アフリカのシンガポール」とも呼ばれるようになっている。この国がいかにしてこの奇跡を成し遂げ、また、実際いま何が起きているのかは、個人的にもずっと関心があった。そんなこともあり、今回は念願かなっての訪問だった。

「でも、たしかにルワンダは国際的なマーケティングは上手いけど、実際は大したことないんじゃないの?」

実は訪問前には、そんな懐疑的な気持ちもあった。が、今回の滞在を経た僕の結論としては、いろいろな意味で「ルワンダは間違いなくスゴい国」というものとなった。

たった1週間しか滞在しておらず理解も知識も大変限られている分際で恐縮ではあるものの、昨年のインド訪問記に続き、僕自身が直感的に感じたこの国のスゴさについて、3点に絞って書き残しておきたい。

1.行政のバックアップによるスタートアップの隆盛

ルワンダ共和国は面積が四国の1.5倍程度の海にも面していない内陸国で、人口も1,200万人程度という国だ。そんなアフリカの小国で、現大統領であるカガメ氏の強力なリーダーシップのもと、特にテック系スタートアップの分野で目を疑うような面白い動きが起きている。

たとえば、こちらはZiplineというドローン・ベンチャー。

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下の離着陸の映像(クロスフィールズのメンバーの声が思い切り入っちゃってますが…)を観てもらうと分かるように、超カッコいいデザインのドローンを時速150キロで飛ばしているスタートアップだ。


↑離陸時


↑着陸時

何を運んでいるかというと、なんと、運んでいるのは血液製剤。政府と連携して、インフラの発達していない地域の20を超える診療所に、血液製剤をタイムリーに効率よく輸送している。

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Ziplineは本社をアメリカ西海岸に置く米国企業で、行政が非常に協力的なこの国で実証実験を行うことを決め、2016年からルワンダで実際にサービスを開始している。先進国では規制が厳しくて実証まで踏み込めないところを、ルワンダならではの行政による全面的なバックアップによって突破することができているようだ。

ちなみに、作業場にはノリノリの音楽ガンガンに流れていたり、オフィスやプロダクトのさまざまなところでデザインが洗練されてたりして、まるでシリコンバレーのスタートアップが突如現れたかのような印象を受けた。バカみたいだけれど、とにかく「超カッコよかった」というのが単純な感想だ。

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続いて紹介したいのが、Babylという遠隔診療を行うスタートアップ。フィーチャーフォン(日本でいうガラケー)でも使える簡易な遠隔診療のサービスが特徴だ。

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こちらは本社を英国に置くスタートアップで、サービスの親和性などから、ルワンダを2カ国目の進出先に選んだのだという。すでに彼らの予想を大きく上回る勢いで成長しており、人口の5分の1にあたる200万人がサービスに登録するに至っているという。

下の写真は、洗練されたオフィスから僻地にいる患者さんの診療を行っているルワンダ人看護師さん。医療というベーシックかつ重要なインフラが、テクノロジーの力でものすごいスピードでラストマイルに届くようになっているというのは、何か胸を打つものがあった。

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さて、この2社に共通するのは、行政とともに産業を創っていくという姿勢だ。

Babylのルワンダにおけるサービス立ち上げをリードしてきた医師のパトリック氏は、「サービス開始と同時に、肝となる国の保険制度をルワンダ保険省と一緒になって設計してきた」と語る。こうした行政の協力的な姿勢が、世界中のテック系スタートアップにとって非常に魅力的に映っているのだと思う。

無論、ここで書いた2社のような動きがルワンダの至るところにあるとは言い難く、いまはまだ局地的に始まっているという段階だ。だが、まだまだ任期の残るカガメ大統領の積極的な姿勢が続く限り、こうした動きは更に加速していくように僕には思えた。

個人的には、日本のスタートアップにもルワンダで実証実験をするような動きが出てきたら面白いと感じた。また、大企業にはそうした動きを様々なリソースを活用して後押ししてもらいたいと期待したい。


2.ベンチャー×NGOで成し遂げるコレクティブ・インパクトの萌芽

先ほど紹介した2社は外資系だったが、ルワンダ自国発のスタートアップも、少しずつではあるが生まれ始めている。

その代表格が、今回1日かけて現場訪問もさせてもらった、与信サービスを手がけるFinTechスタートアップのExuusだ。東アフリカに拠点を置く若きベンチャーキャピタリスト寺久保拓真氏が率いるLeapFrog Venturesが、ルワンダ初の投資先として選んだことでも注目を集める企業だ。

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Babylと同じく、フィーチャーフォンでも簡単にできるモバイルマネーでの預金機能と、それをベースにした与信サービスの提供を目指している。まだ実証段階だが、上手く行けば一気にルワンダ国内やアフリカ各国にサービスが拡大していくことも期待できるとのことだ。ちなみに、上で紹介した2つの企業と同じく、この分野に対する行政からのバックアップも非常に力強い。

なお、僕が特に面白いと感じたのが、ExuusがNGOとのコラボレーションを積極的に行っているということだ。Exuusはサービスをパイロット地域で展開するにあたって、World VisionやCareといった国際NGOと共同でプロジェクトを行っているのだ。

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Exuusは当初、テクノロジーとソリューションはあるものの、農村部のどのコミュニティで実証実験を行えばいいのか悩んでいた。そこで、農村部での豊富な知見とネットワークを持つNGOと協働して、どの地域で展開するのかを決定していったのだと言う。また、サービスをローンチするにあたっても、NGOが培ってきた農村部でのコミュニティや人的資本を活用しながらNGOと共同でプロジェクトを行っているそうだ。

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農村部のカスタマーに向けてアプローチしたいスタートアップのニーズ。そして、Financial Accessを提供することで農民たちのエンパワーをしたいと考えるNGO。2つの組織のVisionとが一致しているのだ。そして、その動きを行政が積極的に一緒に仕掛け、そして後押しするという構図になっている。

これは、今月号のDiamond Harvard Business Reviewで特集された「コレクティブ・インパクト」の動きそのものだ。もしかするとこうした動きは、小回りの聞くルワンダのような国家でこそ加速していくのかもしれない。

また、これまで「コレクティブ・インパクト」や「企業とNGOの協働」という言葉を耳にすると、普通は企業としての主体者は主に伝統的な大企業が想起されていたと思う。が、今後さまざまなダイナミックな動きを生み出していこうと考えると、実はベンチャー企業とNGOとの協働にこそ、新しい価値を生み出す可能性があるように思う。

社会課題の解決がビジネスチャンスと捉えられるようになってきた昨今、スタートアップがNPO/NGOとともに「コレクティブ・インパクト」を生み出していく動きは、もしかするとこれからの時代の潮流になっていくのではないだろうか。クロスフィールズとしても、今後は日本のスタートアップがこうした動きを加速するサポートにも着手していけたらと思う。


余談だが、今回紹介したような社会課題解決を目指すスタートアップの起業家たちは、日本ではソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)などと呼ばれそうなものだ。だが、昨年訪問したインドでも今回訪問したルワンダでも、彼らがそのように呼ばれることはほとんどなく、単純に起業家というカテゴリーでくくられている。特に新興国においては、社会課題の解決こそがユニコーンを生み出すようなビジネスチャンスとなることが当然の見解になっており、あえて「ソーシャル」という言葉は使わないとのこと。これもこれで、すごく考えさせられる気付きだった。


3.国全体が抱えるトラウマと、それを乗り越える人間の強さ

最後に、この国が乗り越えてきたジェノサイド(大虐殺)について。

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「ホテル・ルワンダ」という映画を観た人は日本でも多いと思うが、この国では1994年に人口の10-20%にあたる100万人もの人々が犠牲になるという大変な惨劇が起きた。まだそれからまだ25年しか経っておらず、多くの国民がそのジェノサイド(大虐殺)の記憶を持っている。

今回の訪問では、ジェノサイド記念館や実際にジェノサイドの舞台となってしまった教会を訪問するなどして、この国でどのようなことが起きたのかを少しでも理解しようと努めた。

そのなかで、縁あって、壮絶な経験を乗り越えてきた女性起業家の方の話を伺う機会があった。話を伺った直後は、経験のあまりの壮絶さに、僕含め、参加者一同なにも言葉が出ないような状況だった。ここで詳しく記述することは避けるが、昨日まで隣人や友人だと思っていた人の信じられないような凶暴性を目撃することや、あまりにも酷い経験をすることが、人間はおろか教会や神も信じられなくなるようなトラウマ状態へと人間を落とし入れるということを彼女に教えてもらった。

彼女は続けた。「でも、憎しみを心に宿していると、その憎しみが自分をむしばんでいくのだと気づいた。だから、夫や子どもを殺した人のことを許すことで、私は自分を救っていったのよ」。そして、大きく微笑んだ。いま彼女は、自身がトラウマを乗り越えた経験を活かし、そうした経験を他の女性たちにも提供したいという想いから起業をしたのだという。

人間は愚かだが、同時に、それを乗り越える強さも持っているということを、この女性起業家のお話を聞いて思い知った。人間は、おそろしく強い。

そして、無数の人たちがこのようにしてトラウマと悲しい歴史を乗り越えたことにより、この国はいま復活を遂げようとしているのだ。この国で起きたことを奇跡と呼ばずして、何を奇跡と呼ぶのか。

1週間の滞在を経て、ルワンダという国とそこで暮らす人々に、大いなる畏敬の念を抱くようになった。この国は、本当にスゴい。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

社会課題解決とビジネスとの関係性が深化した2018年

さて、2018年もそろそろ終わりを迎えるということで、僕が活動する社会課題解決の分野で僕が気になった今年のトレンドについて書いてみたい。

振り返ってみると、なにか重大なニュースがあったわけではないものの、社会課題解決とビジネスとの関係性がまた一段、大きく変容した年だったというのが印象だ。一言で言えば、大企業もベンチャー企業も関係なく、ビジネスセクターのプレイヤーが社会課題の解決を事業機会であると明確に打ち出し、そこに向けて本腰を入れて動き出した年だったと思う。

大企業と社会課題解決の新たな関係性

マイケル・ポーターがCSV(Creating Shared Value)のコンセプトを世に出し、企業が戦略的に社会的価値の創出に取り組むべきだと主張し始めたのが2011年。欧州の先進的な企業を中心に盛り上がったこの流れは、日本にもしっかりと到来した。日立製作所やユニクロ、味の素といった先進的な企業がこの流れに反応し、事業戦略の最重要アジェンダとして「社会課題の解決」を掲げた。そして、こうした動きは確実に他の日本企業にも影響を与え始めている。

加えて、2015年に国連が批准したSDGs(Sustainable Development Goals)は企業による社会課題解決の動きを一気に加速させた。いまやSDGsの要素を中期計画に入れ込んでいない大企業はほぼないのではないかというほどだ。まだまだSDGsという言葉と17個のロゴだけが先行していて、SDGsの目指す世界観をバックキャストさせて事業に活用できているような企業は一部しかないものの、それでもこの動きは画期的だ。

更には、マーケットも企業が社会課題解決にコミットするようプレッシャーをかけ始めている。ESG投資は一部の感度の高い投資家のファッションだったが、2018年には世界最大の資産運用会社であるBlackRockのCEOであるLarry Finkが上場企業の社長向けに「サステナビリティや長期的な目線を持つべき」という趣旨のレターを出すなど、風向きは確実に変わっている。日本でもGPIFが2015年にPRI(2006年に国連が定めた責任投資原則)に署名したことで、機関投資家を中心にマーケットの本気度も一気に高まった。当然ながら、こうした投資家からのプレッシャーにより、大企業の側も本気度を高めてきている。2018年はプラスチックゴミの規制が大きく動いたり、つい先日も投資家からのプレッシャーで商社が石炭事業からの撤退を決めるというニュースがあったが、これらもまさに新しいタイプの市場からのプレッシャーが企業の行動を大きく変え始めたことを示していると言える。

僕は普段から日本の大企業の方々との接点が多いが、こうした動きが複合的に作用したことにより、現場レベルでもここ数年で一気に潮目は変わった。

特に2018年は、経営企画や新規事業、R&Dという部署が社会課題の解決に本腰を入れ始めたことを感じる。これまで社会課題の解決といえば、CSRの部署が本業とは離れたところで細々と取り組んでいることが多かったが、そこが変わってきた。投資家や社会からのプレッシャーを受けて考えを変えつつある経営陣が、これからの事業を考える本丸の舞台に対して「社会課題の解決にコミットせよ」とメッセージを与え始めているのだ。トヨタ自動車や本田技研など、社会課題に本腰を入れる企業では、CSRの部署を廃止して経営企画やマーケティングの部署に発展的に統合する動きが目立っているが、おそらくこの流れは更に加速していくはずだ。

ただ一方で、こうした部署を担う人材はNPO/NGOとの接点などもこれまで薄かった人たちだ。上層部から急に社会課題をビジネスにせよという指示を受け、何をすべきか分からずにとまどっているというのが現実だろう。「社会課題とは何か」のイメージをまだ十分に持ちきれていないし、どのような世界を創っていくべきかを一人称で考えきれていない。これから日本の大企業が社会課題を機会として捉えて事業展開をしていくことを考えると、このあたりがボトルネックになると僕は考えている。クロスフィールズとしては、幹部層に社会課題を体感する機会を提供することなどを通じて、こうした流れが更に加速していくことに貢献していきたいと考えている。

ベンチャー企業と社会課題解決の新たな関係性

いわゆるスタートアップの世界においては、ベンチャー企業が社会課題の解決にコミットすることはある種の常識になっているように感じる。

現在のベンチャーの世界を牽引するミレニアル世代の起業家たちには、「単に金を稼げればいい」という考え方の起業家はほぼ存在しない。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグに憧れて起業家を志した現在のスタートアップの騎手たちは、自分たちの事業や技術を通じて「社会を変えたい」と心底考えている。僕が親交を持たせて頂いているベンチャー企業の起業家の皆さんは、NPOやNGOの世界のリーダーたちと同じような公益的な想いを持っているように感じる。

また、そもそもスタートアップとは何かしらの社会のUnmet Needs(満たされていないニーズ)を解決することで事業を行う組織体である。特にほとんどの市場が成熟している日本においては、社会課題の解決こそがある意味では唯一の残された勝負領域になっている側面があると思う。

スタートアップのエコシステムがかなりの程度整ってきた日本において(そろそろピークアウトしているとも言われているが…)、これからの5-10年でどれだけ多くの社会課題がテクノロジーを駆使したスタートアップによって解決されていくのか。個人的には、ここに大いに期待したいと考えている。

ただ、意外なことに、まだまだベンチャー企業とNPO/NGOとの事業上の接点は多いとは言えない。これまで企業とNPO/NGOの協働と言えば、企業側の担い手は常に大企業であったが、これからはベンチャー企業がNPO/NGOとともに社会課題の解決に乗り出すケースを増やしていくべきだと思う。


以上、大晦日に調子を乗って長々と書いてしまったが、2018年はビジネスと社会課題解決との関係性が大きく動いた年だった。明日から始まる2019年はオリンピックの前年にあたる年であり、さまざまな社会の基盤がアップデートされる年だと言われている。

ぜひ、今回書いたような流れがより確かなものとなり、日本社会から多くの社会課題を解決する動きが生まれてくることを願ってやまない。僕としても、クロスフィールズの事業を通じてそうした動きに全力で貢献していきたいと思う。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
☆ Amazonランキング キャリアデザイン部門ベストセラー1位を獲得
☆ ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2016 年間17位

Birthday Donationの結果のご報告と振り返り

7月15日に36歳の誕生日を迎えるにあたって、Birthday Donationという少し変わったチャレンジをした。

そして、、、

かものはし応援_成功

本当にありがたいことに、多くの方に賛同して頂き、20万円以上もの金額かものはしプロジェクトさんの活動資金として寄付できるとともに、僕も東京マラソンに無事出走できることになった。寄付してくださった方、拡散・応援してくださった方には、心から感謝の気持ちで一杯です!本当に、ありがとうございました!!


さて、せっかく珍しい試みをしたということで、簡単にではあるけれど、振り返りのメモも残しておこうと思う。

【今回実施したこととその結果】

・かものはしプロジェクトの担当者の方に相談をして、アクティブチャリティという「約2ヶ月間で20万円以上の寄付をすること」が条件の枠で東京マラソンにエントリーをした(通常のチャリティランナーは10万円の寄付で出走が可能だが、最近は加熱していて、寄付集めのための期間はほんの数日間くらいしかないという状況)

・寄付集めにはpolcaというフレンドレイジング(主に身の回りの人たちに支援者になってファンドレイジングを行うこと)のシステムを利用。Polcaを選んだ理由は、審査なしで手軽にプロジェクトの立ち上げが可能なことと、手数料が一切かからず無料なことから(ただし無料期間は2018年8月で終了するとのこと)。なお、特に目立った寄付の返礼品は用意せず、かものはしプロジェクトさんが実施するイベントの優先参加券のみとした

・結果的には31人もの方から目標額を上回る211,400円の寄付を頂くことができた。このお金は全額がかものはしプロジェクトの活動費として寄付されるとともに、寄付をした人は税控除を受けることもできる

・支援の呼びかけを行ったのは、個人のFacebookで誕生日当日と、残り5万円になったタイミングの計2回。最初の呼びかけから数日間で約8万円(達成率40%)が集まったものの、ここで伸び悩んだ。かなり焦って、その焦りの気持ちも含めて告知開始から2週間くらい経ったタイミングで、人前で話す機会があった際に2度ほど今回のプロジェクトの宣伝をさせてもらった。これが効果的で、初対面の方も含めて5万円強の支援が集まった。そして、残り6万円くらい(達成率70%)になったところでラストスパートの告知を出し、その告知を出した日に一気に達成することができた

【上手くいったこと】

・「誕生日というタイミングでのBirthday Donation」と「東京マラソンのチャリティラン出走」という2つのポイントで訴求をしたこと

・polcaは立ち上げがとても手軽で、思い立ったその日にスタートを切ることができるレベルだった。決済の方法とかも含めて、これだけ気軽に個人がファンドレイジングを行うことができるということが画期的だった

・当たり前なものの、残り6万円になってから「あと少し」という呼びかけをしたことがすごく効いた。やはりクラウドファンディングのような形式では、多くの人がラストスパートでこそ応援してくれるということを実感

・オンラインでの呼びかけだけでなく、リアルな場での訴求が大事。恥ずかしがらずに面と向かって「困ってるから応援して!」と伝えることが大切。(ただ、個人的には1対1だと逃げ道のないお願いになってしまうので気が引けた。1対マスで明るく訴えかけるのがやりやすかった)

【苦戦したこと】

・振り返ってみて、特に初動のところでは思った以上に苦戦をしたという印象。何人かの人に指摘されたが、そもそも「NPOの経営者が他の団体を支援するという構図が分かりにくい」という点が挙げられる。やはり自団体のために挑戦をする方が分かりやすいか。また、やっている側の感覚としても、自団体のことではない宣伝をFacebookでバンバン出すのは本業をないがしろにしている気がして後ろめたさも少しあった印象。。。

・Polcaは手軽な分、使いにくさもあった。達成状況の可視化がいまいちやりにくい点や、支援者の匿名性の高さ(つまりは支援者とコミュニケーションを取りづらい)、また、一度作ってしまうと文言や金額設定に修正が一切できない(僕はタイポが2箇所あって恥ずかしかったけど、結局そのままに…)といった点などで、もどかしさを感じた

・かものはしプロジェクトの方々とも相談して寄付金額は「5,000円~」と設定をしたが、気軽に応援するには高すぎる設定だったような印象もある。何が最適解かは分からないものの、個人的には、もう一度やるなら3,000円くらいに設定するように思う

【やってよかったこと】

・そもそも、普段から応援している団体のことを更に主体的に応援できる機会になったのが嬉しかった(かものはしプロジェクトさんは10年以上サポーター会員をしていたが、なにかもっと貢献できる方法はないかとずっと考えていた)

・事業収入を主な収入源とする事業型NPOの経営者としては、寄付を集めることやクラウドファンディングをすることの大変さが身にしみて分かったのが勉強になった。多くのNPOが日々懸命に行っているファンドレイジングの活動の一端を知れたり、その気持を味わえるということは、かなり貴重な機会ではないかと思う

・さまざまな人から風変わりな挑戦を応援して頂くことができ、改めて、「有り難い」という言葉の本当の意味を痛感させられた。また、特に想定していなかったような友人たちからも支援や心のこもったメッセージをもらうこともでき、そうした人たちとは更に強い繋がりを持つきっかけになった

・通常は個人での挑戦という色合いの濃いマラソン出走という挑戦が、自分だけではなく応援してくださる方々や支援先団体、更には支援先団体の支援する方々のためのチャレンジとなり、マラソンに対するモチベーションが一気に高まる(これは同時にプレッシャーでもあるのですが。。。でも、本当に頑張ります!)

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というわけで、超乱雑な感じなものの、振り返りは以上。

まだマラソンは走っていないものの、今回Birthday Donationという挑戦をしたことは、総じてやってよかったと素直に思う。誕生日とか、自然に誰かから「おめでとう」と声をかけてもらえるタイミングで寄付や支援をお願いすることは、もっと広がっていくべき文化なのではと思う。

今回僕はマラソン出走という形で支援のの呼びかけを行ったが、もっと別の形もありえるはず。polcaはじめ、せっかく便利な仕組みが世の中に溢れてきているので、こういう形で、ちょっと工夫したファンドレイジングを個人が誰でも仕掛けられる楽しい時代になってきている。

ぜひ、記念日とかを上手く活用して、多くの人にいろいろな工夫のファンドレイジングに挑戦をしてもらって、日本のNPOの活動をもっと盛り上げてもらいたい。


<今回僕の挑戦に対して寄付をしてくださった方へ>
この度はご支援を頂き、誠にありがとうございました。心から御礼を申し上げます。寄付を頂いた方には「寄付控除のご案内」と「かものはしプロジェクト主催イベントへのご招待」がありますので、ご希望の方は以下URLに必要情報をお書き頂けましたら幸いです。

https://goo.gl/s8goyY


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テクノロジーで社会課題を解決するために

実はいま、国際協力や社会貢献の分野でのテクノロジーの活用が世界的に話題になっている。たとえば、VRを活用してシリア難民の生活を体感する再現する活動を国連が実施していたり、また、ブロックチェーンを活用した難民キャンプでの食料配給などが行われていたりする。

そんな背景もあり、先日、国際協力NGOセンター(JANIC)の理事として、「国際協力業界でのブロックチェーンの活用」をテーマにした勉強会を主催させてもらった。20人くらいの経験豊富な国際協力NGOのリーダーたちが集まるとともに、そこに株式会社カルミナの安藤翔太さんというテクノロジー分野の専門家をお呼びして意見交換を行うという、日本においてはかなり画期的な企画となった。

プレゼンテーション1
↑株式会社カルミナのウェブサイト


参加者がブロックチェーンについての基礎的な理解を深める有益な機会になったし、ブロックチェーンをどのように国際協力や社会貢献の分野に活用するかについて、大いなる可能性を感じることができた場だったと思う。

個人的には、「ブロックチェーン=仮想通貨」のイメージが強かったものの、この分野においてはブロックチェーンのID認証としての機能が効果的だと知れたことは、目からウロコだった。たとえば、ブロックチェーンにより不特定多数の分散化された集団によって難民の人たちがIDの認証を受けることができれば、それは、これまで国家という権威に存在を認めてもらえなかった人々がその存在を世界に認知されるということを意味する。これはとても夢のある話だと、素直に思った。

もちろん、ブロックチェーンは発展途上の技術であり、実社会での活用はまだまだ始まったばかりという段階だ。これからどのように活用が進んでいくかは、まだまだ不透明な部分も多い。でも、だからこそ、国際協力や社会貢献の業界としては、こうしたテクノロジーの活用に対してアンテナを貼っておく必要があるように思う。

と、ここで一つ疑問がある。

こうした時代背景のなか、NPO/NGOのリーダーたちは、最先端のテクノロジーを必死に勉強して積極的に事業に活用していくべきなのだろうか。

僕の答えは、いまのところNOだ。

なぜなら、それには莫大な時間がかかるし、非効率だと感じるからだ。むしろ、テクノロジーに精通した人材、特にテック系のスタートアップ企業を率いる起業家の方々に、国際協力や社会課題解決の世界に入ってきてもらうほうが圧倒的に近道だと考える。

幸いにして、同世代のスタートアップの経営者たちと話をしていると、その目線の先には、自分たちのサービスやプロダクトを使っていかに金儲けをするかではなく、むしろ「いかに社会を変えられるか」が目指されている。つまり、スタートアップの経営者と、国際協力や社会貢献のリーダーたちの世界観は近づいているのだ。

だからこそ、NPO/NGOの業界としていま重要なのは、自分たちでゼロからテクノロジーを勉強していくことよりも、もっともっとスタートアップ界隈の経営者の方々と仲良くなって、彼ら/彼女たちを社会課題の世界に引き込んでいくことじゃないだろうか。

たとえば、スタートアップ企業の優秀なエンジニアの方々向けに途上国の農村でハッカソンを開催したり、あるいは、スタートアップの経営者がNPO/NGOのリーダーたちとが特定の社会課題の解決に向けたディスカッションの場を設けるなど、打ち手は無限にある。これからは、そんな活動が求められていくんではなかろうか。

…というわけで、スタートアップ界隈の友人の方々、僕が急にわけのわからない話をし始めるかもしれないことを、どうかお許しください!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
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※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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もう世界は辺境から変わっている

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先週は日本企業のエグゼクティブの皆さんと一緒にインドを訪れ、ムンバイとバンガロールを1週間かけて回ってきた。

社会的企業(社会課題を解決するというミッションを持った企業)を中心に、7団体とのディスカッションを行うとともに、スラム・農村・ゴミ収集場などといった現場を訪問してきた。プログラムとしての成果はまた別途報告するとして、今回のインド滞在で僕がつかんだ感覚を記憶が新しいうちに書き留めておきたい。

7年前の本が描いた景色が、現実のものに

辺境から世界を変える

個人的にも親交のある加藤徹生さんが2011年に書かれた『辺境から世界を変える』(ダイヤモンド社)という名著がある。発展途上国の辺境地域から、社会課題に当事者性を持つ起業家たちがこれから世界を変えていくであろうというメッセージが、事例とともに力強く紹介されている。

7年前にこの本を読んだ時には、その斬新な世の中の切り取り方に興奮を覚えながらも、「たしかにそうなっていく可能性もあるかもな」という程度の感覚だったことを覚えている。

あれから7年。今回一気にインドで7団体と対話をするという貴重な経験をしてみて、あの本が示唆していた未来はすでにやってきていて、「もう世界は辺境から変わっている」ということを実感したというのが、今回の訪問での一番の感想だ。

遠隔診療がインド農村部の医療サービスを革新

今回訪問したすべての団体を紹介することはできないが、たとえばNeurosynaptic社。医療へのアクセスが難しい地域に住む人たちに対し、テクノロジーを駆使した遠隔診療で適正な医療を提供することに2002年から取り組んでいる社会的企業だ。

これまでに2,200人のヘルスワーカー(医師ではない)を組織し、辺境地域に住む5,000万人もの人たちに対して遠隔での医療サービスを提供してきている。ヘルスワーカーが携帯する専門キットには35種類の診断ツールが入っており、24種類もの診断行為が可能だ。

これによって、村落部に住む人たちはわざわざ遠い病院に行かなくても質の高い医療が受けられる。それだけでなく、病院の側にとっても高い投資をして分院を出さなくても幅広い人々に対して医療サービスを提供できる。また、診療データはすべてクラウド上に蓄積されて分析することができるので、病院としてそのデータを活用して更に医療の質を高めることが可能だ。

ちなみに今回はデモも体験させてもらったが、患者の心音や心拍数をリアルタイムで確認することができるなど、まるでSFの世界にいるかのような気分になるほどだった。

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↑CEOのSameer氏が実演した肺活量検査の様子。遠隔でリアルタイムにスマホにグラフが表示される


やはり驚くべきなのは、この最先端のテクノロジーを活用したサービスが、インド人の起業家の手により、インド農村部の人たちに幅広く届けられているという事実だろう。今回一緒に訪問した日本企業のエグゼクティブたちも、彼らの取り組む事業のあまりの先進性に、何度も感嘆の声が漏れてくるほどだった。

僕自身はあまりこの分野に専門性があるわけではないが、これから更に高齢化が進んで医療アクセスの困難さが社会課題となる日本でも、Neurosynaptic社が提供するような技術は必要とされてくるはずだ。莫大なニーズがあり、また規制も日本ほどに強くはない発展途上国の「辺境」から生まれたイノベーションが、日本の社会課題を解決するようになる日はきっと遠くないはずだ。

第4次産業革命が発展途上国の現場に味方している

2011年の創業以来、クロスフィールズはアジア各国の社会的企業とさまざまな協働をさせてもらっているが、特にここ数年のインドの社会的企業の発展は目覚ましいものがある。

今回はNeurosynaptic社の他にも、さまざまな起業家がイノベーションを起しつつある現場に足を運んできた。IoTを駆使して乳業分野に革命を起している社会的企業や、ゴミ処理からクリーンエネルギーを生み出そうとしている社会的企業など、どれも驚かされるものばかりだ。

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↑IoTのウェアラブルデバイスが付いた牛は、いつ妊娠して搾乳が可能になるかクラウド上で管理できる

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↑スラム地域や集合住宅のゴミ捨て場で、その場でバイオガスを発生させている


共通していたのは、まだ日本ほどビジネス上の仕組みやインフラがしっかりとしていないところに、部分的に最先端のテクノロジーが組み込まれていることだ。そして、そこから産業構造や社会構造を変えるような大きな変革が生み出されつつある。

完全に私見だが、やはり第4次産業革命なるものが、この急速な変化の土台にあるように思う。

IoTやAIといった第4次産業革命時代のテクノロジーには、大規模な設備投資を必要としないという側面がある。つまり、発展途上国の辺境の起業家たちにも、最先端の技術を活用するチャンスが一気にめぐってきていると考えられないだろうか。

インドのモディ首相はそのことをすごく分かっていて、様々な政策を通じて社会的企業が各地でイノベーションを起こすための手助けをしている。多くの起業家たちが政府の後押しを受けながら、辺境の地で最先端のテクノロジーを活用して社会課題を次々と解決しようとしているのだ。

整いつつある、社会課題をビジネスにするエコシステム

そして、もう1つ。こうした社会課題解決のエコシステムが出来上がりつつあるということも大きい。

今回訪問させてもらったAavishkaarは、社会的企業に特化して投資を行うベンチャーキャピタルだ。既に300億円規模のファンドを集め、20社以上のエグジットに成功しており、利回りも脅威の122%を誇っているという。僕が6年前に訪れたときには全くこんな規模ではなかったが、もはや社会課題を解決するという行為自体が、インドでは産業として成り立ってきているということだろう。

また、ムンバイにあるTata Institute of Social Sciencesでは社会起業家に特化した修士号のコースが開設されるなど、この分野での人材育成も一気に進みつつある。こうした動きに政府による後押しも加わって、社会課題解決型のビジネスが生まれて育っていく仕組みが一気に整備されてきているのだ。

辺境からこそイノベーションが生まれる時代に

イノベーションとは、研究開発の拠点を持つ先進国で生まれるものであり、途上国ではその廉価版のサービスや製品が広がっていくというのが、これまでの世界の流れだった。

でも、これからその流れは徐々に、でも確実に逆転していくように思う。

さまざまなインフラが整っておらず、明確な社会的ニーズがある辺境地域においてこそ、第4次産業革命時代のテクノロジーは威力を発揮する。そして、そんな「辺境」からこそ、イノベーションが生まれていくのだ。

発展途上国や農村部といった今日的な「辺境」が世界の中心となり、先進国や都市部といった地域こそが「辺境」になっていくような未来の世界が、もうそこまで来ている。


発展途上国の社会的企業と日本企業をつなぐ役割を持つクロスフィールズは、これからの時代にいったいどんな価値を発揮できるのか。そのことを、これからゆっくりと考えていきたい。(とはいえゆっくりもしていられない気がするけれど…)

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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