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至善館への2年間の投資を評価してみる

早いもので、大学院大学至善館なる新設の社会人大学院に1期生として入学して2年間が経ち、あと少しで卒業という段階まで来た。少しずつこの大学院の存在も知れ渡ってきているのか、「ぶっちゃけ、至善館ってどーなの?」という問い合わせを個別にもらうことも増えてきた。

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せっかくなので、卒業を間近に控えたこのタイミングで、至善館への入学を検討している人向けに、僕個人がこの2年間をどう捉えたのかを書いておきたい。至善館のメインターゲットである企業勤めのビジネスパーソンに加え、僕のような起業家やNPO関係者にもぜひ参考にしてもらえたらとても嬉しい。

なお、入学して半年のタイミングでも大学院の概要や僕の入学動機あたりは別の記事にまとめたので、今回は総括的な内容に絞って書いていきたい。

①2年間の流れと学生生活はどんなものだったか?
②印象に残った授業トップ5は?
③最終的な学びはどんなものだったか?
④ずばり、2年間の投資はペイしたのか?

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①2年間の流れと学生生活はどんなものだったか?

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↑僕の在籍していた1期生英語クラス約40人の集合写真

2年間の流れをざくっと言えば、1年目は様々な分野の知見をインプットすることが中心で、2年目は一転して、自己を内省したりそれを形にしていくアウトプットが軸になっていた。

1年目はとにかく沢山の授業と課題があって、仕事や家庭とのバランスが本当に大変だった。平日の夜1回で1コマ(約3時間)の授業が入るのと、土日のどちらかに2-4コマ(6~12時間)の授業が常に入っていたという感じだ。毎回の授業に対して約1-2時間くらいの事前or事後課題があるのだけど、僕の場合これは基本的に授業がある日の早朝や深夜にやり切るようにした。つまりは、通常時については、詰め込めば授業がある日だけ大学院に時間を使うだけでも何とか乗り切れるという感じではあった。

ただ、2ヶ月おきくらいにやってくる、各授業で課される最終レポートやプレゼン(グループでの準備が必要)はかなり重い。僕の場合は平均すると各授業で5-10時間くらいの時間をかけていたように思う。中高生のときに味わっていた期末テストのプレッシャーとその開放感が、20年ぶりに生活のなかに戻ってきたような感じだ。

対して2年目は、授業はかなり減る。僕の場合は選択科目をあまり取らなかったこともあって、授業の量自体は、1年目の半分くらいだったのではないかと思う。ただ、2年目には少人数のゼミナール形式での個人プロジェクトが始まる。ゼミの中身はあとで詳しく紹介するが、この個人プロジェクトのプロセスは本当に濃密だった。至善館での学びを踏まえて自分が挑戦したいプロジェクトについて、9ヶ月かけて深めていき、最後はそれをスピーチ・プレゼン・論文の形でまとめていく。僕はこれには本当に全力を傾けたので、素晴らしい経験だったと同時に、本当に苦しいプロセスでもあった。どれだけ時間をかけたのかは、もはや分からない。

そして、これだけのことを全て英語でやるというのは、普段の業務でもある程度英語を使っている自分としても、かなりの負荷だった。こうして終わってみると大きな自信につながったものの、本当に大変だった。

改めて2年間を振り返ってみて、よくこれを事業経営しながらよくやったなと思う。でも逆に、僕のように小さな組織の事業経営にフルコミットしながらでも両立できる負荷のレベルだとも言えるかもしれない。

ちなみに、多くの学校と同じように、至善館でも2020年の3月頃からはすべてのプログラムがオンラインでの実施となった。もちろんリアルのコミュニケーションの醍醐味は捨てがたいものの、このあたりのスピーディーな対応は素晴らしく、Zoomの様々な機能を駆使して各教員が質の高い授業を行っているという印象だった。個人的にも、組織としてのこのあたりの対応からは、多くのことを学ばせてもらった。

②印象に残った授業トップ5は?

「全人格リーダーシップ教育」を掲げる至善館での学びは、他のMBAとはかなり違うものだ。その一旦を紹介するために、僕個人にとって印象的だった授業トップ5と、そこでの学びをごく簡単に紹介したい。

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その1 企業論(野田智義先生)
至善館の創始者・理事長である野田智義さんによる渾身の授業。「企業とはそもそも何なのか?」という骨太のテーマについて、あらゆる角度から検証を重ねていく。たとえば、「企業は株主のものなのか?」という問いには、Private EquityやNGOなど、立場の違うゲスト登壇者から様々な意見を聞きながら考えを深めていく。全24時間の授業が終わる頃には、これらの問いに対する自分自身としての持論を確立できるようになる。これはビジネスの世界にも身を置いている者として、やっておいて本当に良かったという経験だった。

その2 哲学(竹田青嗣先生)
西洋哲学の切り口から「資本主義とは何か?理想の社会システムとは何か?」について迫っていく授業。僕はこの授業を経験できただけでも、この大学院に来て良かったと思えるほどの内容だった。これまでも何となく「資本主義は間違っている」などと吠えていた僕だったが、資本主義について真面目に勉強したことはなかった。授業では、そもそも資本主義はどんなきっかけで何のために作られた仕組みなのかを、農耕技術が誕生した1万年前から遡って、多くの哲学者の理論とともに学んでいった。資本主義が人類に何をもたらし、そして、いまどんな構造上の課題を持っているのかについて、竹田先生の鮮やかな分析とともに考えを深める。資本主義という概念に対するイメージが、自分の中でまさに再構築されるていく時間だった。

その3 社会学(宮台真司先生)
メディアでも舌鋒鋭い発言で有名な宮台真司さんの思想や理論を、体系だって学ぶことができる貴重な授業。「なぜ現代人の感情は劣化してしまったのか?」という問いについて、宮台さんならではの鋭い洞察のもと、社会学のレンズで検証をしていく。いったいこの社会には何が欠落していて、どんな取り組みが求められているのか。その鍵は「ソーシャル・キャピタル」という概念にあるというのが宮台先生の答えなのだが、この考え方はNPO経営者としての自分の価値観に大きな影響を与えてくれるものだった。

その4 東洋思想(北神圭朗先生)
なぜMBAで東洋思想なのかと突っ込みたくなると思うが、これが東洋と西洋の融合を掲げる至善館の真骨頂とも言える。老子の思想や貞観政要などといった、西洋の発想とは全く異なる東洋の思想について、原典を読みながら学んでいく。正直、難解すぎて十分理解できたとはとても言えないが、それでも、西洋のロジカルかつ科学に依拠した考え方が全てではないということを知れただけでも、大きな気付きとなった。僕としては、これを機会に東洋思想については継続的に学んでいきたいと思っている。

その5 演劇(平田オリザ先生)
以前から尊敬していた平田オリザさんによる全4回の演劇の授業。日本語クラスと英語クラスの合同で、80人が10チームくらいに別れて英語劇で競い合うというもの。平田オリザさんご本人から指導をされながら多国籍の学生で劇を作り上げるプロセス自体も忘れ得ないものだったし、「演劇は民主主義を守るために存在する」という平田オリザさんの哲学の一端を講義の中で知れた素晴らしい時間だった。

番外編 中村哲さんゲスト講話
至善館では、授業とは別に「フォーラム」という外部ゲストを招いての講話が定期的に開催される。僕の在学中にも、サントリーの新浪剛史社長や、逮捕直前のカルロス・ゴーンさんといった著名人を含む多くのゲストが来てくれた。そして、僕の人生の中でも重要な機会となったのは、2019年に亡くなる約1年前にペシャワール会の中村哲さんの講話だ。3時間にわたる講演を伺うとともに、終了後には個別にお話する機会も持たせて頂けた。この時頂いた言葉は、生涯忘れないと思う。(なお、この時に中村哲さんに頂いた言葉は別のブログ記事にまとめさせてもらった)

以上、僕の独断と偏見で選んたトップ5の授業と番外編について紹介した。当然ながら学生によって好みは違うが、周囲の学生と話をしてみても、至善館の強みであるリベラルアーツ系の授業が印象に残ったという声はやはり多い。

この他にも、僕の印象に残っている授業は数多い。デザイン思考やシステム思考、ネゴシエーションなどといった授業を通じて発想のフレームワークを増やせたことは、自分の事業を進める上でも即座に活きた。また、実は落第しかけたのだけれど(笑)、AIやプログラミングについて学習する授業は、これからの人生には必ず活きてくると思う。そして、これもなぜMBAでという感じだが、大阪府特別顧問の上山信一さんによる公共政策の授業は迫力があって最高に楽しかった。

一方、戦略論や会計の基礎知識、プレゼン演習などといった、いわゆるMBAらしい科目もある。特に戦略論などはハーバードの人気教授を客員教授として招聘する気合いの入れっぷりだったが、正直、僕個人としてはこのあたりの授業はそこまで印象に残らなかった。ただ、MBAらしい授業こそ学びが多かったと振り返る学生も多いので、やはり学生によって印象は大きく違うのだと思う。

③最終的な学びはどんなものだったか?

上で挙げたような授業それぞれでの学びも十分に大きかった。ただ、それぞれの授業をぶつ切れに学ぶのであれば、各授業の著者の本を読めばいいのかもしれない。そうではなく、至善館での学びに価値があるのは、それらの学びを統合して形にしていくプロセスにあったと2年間を振り返って思う。

最初に書いたように、2年目の後半には、個人プロジェクトという形で至善館での学びをアウトプットすることが求められる。アウトプットのプロセスは、CTIジャパン創設者である榎本英剛さんのファシリテーションにより、数ヶ月かけて自己理解を深めていくことから始まる。かなり恥ずかしい内省ワークの数々をやっていくのだが、多国籍の学生との対話も踏まえ、自分の価値観や人生のビジョンを言語化していくプロセスはこの大学院ならではのものだと思う。

そして、いよいよ至善館での学びや内省の結果を踏まえ、それを事業プランへと落とし込んでいく。これを、卒業までの約9ヶ月くらいをかけて、少人数のゼミナール形式でやっていくわけだ。

僕は運良く希望が通り、枝廣淳子さんのゼミへ。NPOの世界では知らない人はいない、環境活動家でありシステム思考の第一人者だ。彼女に文字通り、みっちりと稽古をつけてもらった。普段は実務家として勢いでごまかしてしまうことが多い僕なのだけど、枝廣さんにはいつも一瞬で論理の矛盾と裏付けの弱さを指摘された。それが悔しかったこともあり、人生で初めてなのではというくらい、沢山の理論書を読むことになった。本当に社会の仕組みを変えたいと思うのであれば、やはり実践だけではダメで、しっかりアカデミックな理論も持っていなければならないと痛感するプロセスだった。

ゼミでの時間は、いつも濃密だった。ゼミのメンバーは5人で、僕以外はイタリア人・ブラジル人・マレーシア人・インドネシア人という多国籍なゼミだった。彼ら・彼女たちから多様なインプットの数々をもらえたのは、非常に大きかった。自分の思考がいかに日本人的で、時として傲慢かつ一面的になってしまうのかを教えてもらえたように思う。

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最終的には、個人プロジェクトをスピーチ・プレゼン・論文の形ににまとめていく。なお、いつか対外的にも発表しようと思うけれど、僕は「共感(Empathy)」をテーマにしたかなり野心的なプロジェクトを立ち上げる構想をじっくりと練り上げた。最後の論文は、英語で1万ワード以上にも及んだ。

振り返ってみて、僕がこのタイミングで大学院に入学した最も大きな理由は、起業家として10年目となるこのタイミングで、改めて「自分の内なる声」を聞くことだった。

そして、これだけ多くののインプットを豪華な講師陣からしてもらい、それを枝廣先生に伴走してもらいながら、思い切りアウトプットとして吐き出した。最終的なアウトプットを振り返ってみて、もちろんまだまだ改善できる点もあるかもしれないけれど、それでも、間違いなく、いまの自分のベストを出し切った感覚がある。

起業して以来、ある意味では、社会からの期待や団体の代表としての立場でいつでも物事を考えていた。でも今回は、そうした立場から完全に自由になって、自分自身の内なる声をしっかりと聞き切ることができたという感覚だ。この感覚に納得感を得られたことが、僕にとって最大の収穫だったと思う。

今回アウトプットしたことは、間違いなく、僕がこれからの10年間を生きる上での新たな道標になってくれると信じている。

④ずばり、2年間の投資はペイしたのか?

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さて、改めて、至善館で過ごした時間はペイしたのだろうか?

振り返ってみて、本当に大きな投資だったと思う。正直、仕事面では大きな迷惑をチームにかけたし、この2年間は事業上のアクセルを十分に踏み切れなかった部分もある。また、家庭との時間も犠牲になった。2人の子どもたちと過ごす時間は減ったと思うし、特に奥さんには大きな負担をかけてしまった。

小さな組織の経営者として、当然ながら、事業上の危機もある。正直、2度ほどバランスを崩して本気で退学しようと考えたタイミングがあった。それでも、家族や同僚に支えてもらって、なんとかしてやり切った。周囲の応援には、感謝しかない。

それだけの大きな投資をしたわけだが、結論としては、僕としては、投資に十分に見合う学びを持ち帰らせてもらったと思っている。

やはり、一度何かしらの経験をして、そこでの成功体験や失敗体験から自分の軸をある程度持った段階での学びには、意味が大きい。一度できた軸を壊し、それをもう一度強くするような、そんなプロセスだ。僕が今回経験したのは、いわゆるリカレント教育というものだったと思うが、まさに、その意義を痛感した。

ただ、すべての学生が僕と同じような感覚を持っているかと言うと、正直、そうではないと思う。個人的には、やはり何かしらの強い職業経験と自分自身の思考の軸を持っていることが、ここでの時間を有意義に過ごすことの必要条件だと思う。また、この記事を読んでもらったら伝わるように、相当な独自色のあるプログラムだ。当然ながら、好き嫌いがあると思う。

それから、「アジャイルなプロセスは嫌い」という人も、2年間を有意義に過ごすのは難しいかもしれない。出来上がった完全な教育プログラムを期待する人から見れば、まだまだ「現在進行系で進化中のプログラム」という印象は強いかと思う。実際、1期生のフィードバックをもとにして、2年目から教授が入れ替わったりプログラムの編成が大きく見直されたりしているようだ。ある意味では、こうした不完全さも許容しながら、自ら学びを深めていこうとすることが、大事になると思う。

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以上、長々と書いたけれど、僕はこの至善館という場にとても感謝しているし、多くの人に自分が得たような学びを得てほしいと心から思っている。そして、至善館をさらに良い場にして行きたいとも思っている。

その意味では、僕個人としては、生徒の構成比に占める大企業のビジネスパーソンの比率があまりにも高すぎると感じている。だからこそ、僕のような起業家やNPOの世界で働く仲間にこそ、ここで学んで欲しいと思う(僕も利用したが、NPOの人や起業家には奨学金枠もあるので、ぜひトライして欲しい!)。

この文章を読んだ人が、ぜひ後輩として入学してくれることを祈って。

追記;
ちなみに、英語でも振り返りを書いてみたので、必要な人はこちらをご覧下さい!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

Reflection of my two years at Shizenkan University

In this post, I would like to write about my experience at Shizenkan University, a newly-established graduate school in Japan. I joined this school as a first batch student in 2018 and, hopefully, am about to graduate very soon.

至善館
As there is very little information available, especially in English, I believe writing this kind of memo on my personal experience might be valuable for those who will consider joining this school. Yet, I don’t think I am the best person to write this post since I am a Japanese student who cannot fully understand the perspective of non-Japanese students. Please keep this in mind while reading my post.

Now, let me write my opinions following the agenda below.

1. What is Shizenkan?
2. Why did I join?
3. Course overview
4. My overall impression
5. Possible concerns

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1. What is Shizenkan?

Shizenkan is a Tokyo-based graduate school focusing on leadership and Innovation where you can obtain an MBA. The concept of this school is rather unique and its emphasis on liberal art subjects such as western & eastern philosophy, sociology, and religion is no doubt exceptional.

The course is a 2-year-long part-time program for young professionals from various sectors in their late 20s to early 40s. Normally, we have one-weekday class (3 hours long) and between one to three weekend classes (6-12 hours long). In addition to the attendance to these classes, we are requested to do pre/post assignments and to submit mid/final reports or make group presentations with other students.

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↑Classmates at the English class

Indeed, it is really a heavy burden for full-time workers. However, I think I have proved that even an entrepreneur managing a start-up organization with two small children is able to handle it. (I can’t thank enough those who have been supporting my challenges, especially my team members and my family)

This school has roughly 80 students in one cohort. There is both a Japanese course and an English course (I belong to the English course) and each course has 40 students. Both of the courses consist of roughly 70 percent Japanese students and 30 percent non-Japanese students from many nationalities.

Concerning students’ backgrounds, they mostly come from Japanese large corporations. Although there are some bureaucrats and entrepreneurs, I think Shizenkan needs to enhance diversity by increasing the number of students with unique backgrounds.

2. Why did I join?

I am a Co-founder and CEO of Cross Fields, which is a Tokyo-based not-for-profit organization aiming to bridge the business sector and the social sector. Since its foundation in 2011, I having been managing this organization to make a difference in society as a social entrepreneur.

So, what brought me to engage in Shizenkan as a student? Let me share with you a couple of reasons.

First, I just wanted to acquire new inputs and insights. As I had been making outputs for seven years since I became an entrepreneur, I needed time to sit down and update myself by obtaining new inspiration and reflecting on my experience.

Second, I wanted to learn from somebody who I respect a lot. Dr. Tomo Noda, Founder & Chairman of Shizenkan, is one of my role models and known as an author of a legendary book on leadership, “A Journey of Leadership”. Before the establishment of Shizenkan, he taught management strategy at INSEAD France (gained Best Professor award for three years in a row) and then started an initiative in Japan to cultivate senior management leaders of Japanese corporations. When I heard about the concept of Shizenkan for the first time from him, I intuitively thought that it must be the most exciting experience to learn at the school that Dr.Noda devotes his life to.

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↑Dr. Tomo Noda

Last but not least, I was fascinated by the philosophy of this school. Shizenkan questions the value of existing business schools in the world and envisions creating an alternative leadership education platform from Japan. While grasping the beautiful parts of Western MBAs, Shizenkan tries to integrate them with liberal arts such as Eastern Philosophy or Sociology. I have truly empathized with Shizenkan’s attitude of trying to overcome the antinomy of “East vs West”, “Technology vs Humanity”, and “Business vs Society”. This is exactly what I have been questioning while having been engaged in the activities of Cross Fields, so this message attracted me extremely powerfully.

3. Course overview

Reflecting on the flow of the two-year course at Shizenkan, the first year mainly focused on input while the second year focused more on output.

The first year (input part)

Concerning the input programs, Shizenkan has various subjects. The variety of classes ranges from classical MBA subjects, such as Strategy, Negotiation, and Communications to the latest subjects like Design Thinking or AI programming. Yet, the strength of Shizenkan can be seen in its liberal arts subjects, such as Philosophy, Sociology, Religion, and so on.

What I like about the Shizenkan courses is its consistency. Most of the subjects are interrelated with each other and we can study similar topics from different angles. For instance, we studied “Accounting”,” Corporate Theory” and “Western Philosophy (The theories on Capitalism)” in the same semester. While studying practical accounting, we were requested to answer the fundamental questions like “Who owns a company?” or “Why did human-beings select Capitalism as our socio-economic system?”

The learning here is not receiving basic knowledge or honing simple skillsets. Instead, it is always a combination of getting to know the fundamentals of classic theories and asking yourselves to develop your own theories in use.

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The second-year (output part)

In the second year, an output focusing program started with a reflection workshop facilitated by Professor Hide Enomoto, a founder of CTI (The Coaches Training Institute) Japan. Throughout some of the deep reflection exercises with our diversified classmates (some of them were embarrassing ones…), we crystalized our values and life missions.

Then, we moved on to nine-month-long seminar-type learning. A group of five students was formed as a seminar and one professor was assigned to each seminar. In my case, I had seminar classmates from Brazil, Italy, Malaysia, and Indonesia and had Professor Junko Edahiro, a very famous environmental activist specializing in the system thinking approach, as a seminar faculty leader.

Together with my seminar classmates and faculty, I narrowed down my problem awareness and transformed it into a business idea. Discussing with students from different backgrounds and receiving to-the-point inputs from Professor Edahiro has been extremely meaningful and made productive moments.

At the end of the seminar, every student delivered a 7-minute speech on their vision and 15-minute presentation on their business scheme. Also, we needed to submit a final report. This process was extremely valuable for me and I was able to come up with a new business model that I really want to achieve as my next endeavor.

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↑ My seminar group members

4. My overall impression

As I have stated, I invested a substantial amount of time in Shizenkan. Yet, I strongly think that all of my investments and efforts have well paid off. Let me touch upon several highlights of what I have experienced through two years of the Shizenkan experience.

Exploring your own answer to fundamental questions

Honestly speaking, I didn’t have any interest in acquiring MBA-ish skills. Instead, I wanted to explore the essence of the economic system or the philosophies that created the current societal system.

Although I tended to insist that I want to change the way the current Capitalism system works, I didn’t have a chance to study thoroughly about the societal system. In this sense, the experience of getting to know who created a blueprint of this societal system or identifying structured problems of the current system has been truly meaningful for the rest of my life.

After experiencing various liberal arts subjects at Shizenkan, I was able to build up my own theory toward various topics. I believe that having a personal philosophy based on the learning of liberal arts would be extremely important in the coming age not only for business leaders but also for entrepreneurs or people working for the social sector.

Learning from and discussing with frontline practitioners

The professors at Shizenkan are seldom pure academics, but most of them have a strong business background or are engaged in on-going challenges. You can find more practitioners among professors than any other university in Japan.

Professor Junko Edahiro, my seminar faculty, is a good example. She is a fairly famous figure in the social sector and has been working as a grass-roots environmental activist. Also, some professors have previous experience managing multinational corporations as CEOs. An unforgettable experience for me was to have an acting class from a very famous theater director Oriza Hirata in the communication group work.

Lastly, the most precious experience for me was the direct interaction with Dr. Tomo Noda, Founder of Shizenkan. Since I joined Shizenkan, I reaffirmed the power of his teaching capability and the profoundness of his philosophy. In fact, he appeared in most of the liberal art subjects and gave his interpretations on various topics. Spending time with this exceptional educator and innovator was no doubt a valuable experience.

Transforming profound learnings into real practice

In most of the cases, learning liberal arts tends to end up not creating anything practical. However, Shizenkan students are somehow forced to create a practical project based on the learning here. This process is extremely tough, but it makes a big difference.

To me, the process of creating output was the most valuable part of Shizenkan. Moreover, what is important for me is that I am feeling that I did my best in this process. As I dedicated all of my energy, the final deliverable (speech, presentation, and report) was the crystallization of my entire learning at Shizenkan. I believe it will function as a compass that guides me in the right direction when I am lost.

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5. Possible concerns

I think I have written too many positive comments about Shizenkan. However, mine is just one of the opinions. The impressions are of course different from student to student. To make some balance, let me share possible concerns for those who consider joining this unique school.

As I have stated so far, the lessons you learn here are quite different from normal MBA programs. Hence, the flavor of the programs is said to be so-called love it or hate it. If you are a person who wants to know the basic business skills or knowledge, this might not be the best school for you.

Both positively and negatively, the identity of this school is set based on the Japanese perspective. Although Shizenkan has a global perspective and tries to include various types of case studies, many professors utilize the perspectives or contexts that are based in Japan.

Also, the name recognition of this MBA program is almost nonexistent at the moment. If you are a person who cares about the status of a global brand, this is not a suitable school. It might be a school for those who aspire to raise recognition of this school by creating a distinctive performance on their own upon graduation.

Lastly, I don’t recommend this school to those who don’t like an agile process. For those who expect a robust and perfectly designed program, this school will give the impression of a program extremely in development. Shizenkan is like a start-up organization. I hear that Shizenkan is making an effort to improve the quality of the programs based on the feedback from students. If you are a person who can enjoy this kind of agile environment, you might be a perfect candidate.

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Thank you for reading such a long post. I hope this will help you to better understand what Shizenkan is.

As a person who loves the concept of Shizenkan, I would like people who can share the common vision to join us. I am personally waiting especially for people with an entrepreneur background or somebody working in the social sector to join Shizenkan. (There is a scholarship program available for these people!)

Co−Founder and CEO,
CROSS FIELDS
Daichi Konuma

至善館という大学院に通ってみた個人的な感想

ひっそりとではあるけれど、実は昨年2018年8月から大学院大学至善館という社会人大学院に通っている。2018年に開校した新しい大学院で、僕はその1期生として学ばせてもらっている。

至善館
至善館(しぜんかん)」というなんとも怪しい名前の大学院だが、英語で表現するとGraduate School of Leadership and Innovationとなるそうで、修士号としてはMBAが取得できる社会人向けの2年間のコースになっている。

そろそろ通い始めてから半年が経過しようとしているので、一度、ここまでの学びやここでの経験を整理してみたいと思う。ちょうど二期生の募集も始まるタイミングのため、「評判どう?」「実際いいの?」という問合せもチラホラ頂くこともあり、これからこの大学院で学びたいと思っている人の参考にもなればと、せっかくなので以下のような項目でそれなりにちゃんと書いてみたい。

①僕はなぜ入学したのか?
②実際どんな感じの大学院か?
③どんなことを経験し、なにを学んでいるのか?
④ぶっちゃけ満足しているのか?
⑤この大学院に興味を持った人へ

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①僕はなぜ入学したのか?

僕がこの大学院への入学を決めた理由は3つほどある。

1つ目は、新たなインプットの機会を得たかったということ。僕は20代の後半に起業をしてからアウトプット過多の生活をずっと続けており、一度ゆっくりと腰を押し付けて、今後の人生のための学び直しをしたかったというのが大きい。30代の半ばで本業を続けながら学び直しをできるというのが、とても魅力的だった。

2つ目としては、せっかく学ぶのであれば、尊敬できる人のもとで学びたかったということがある。理事長である野田智義さんは僕の座右の書の1つである「リーダーシップの旅」の著者であり、自分にとってはロールモデルと呼べる人の1人だった。この人が人生を掛けて設立する大学院で学べるというのは、自分にとって最高の機会だと直感的に思った。

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↑理事長の野田智義さんと、提携するIESE Business SchoolのFranz Heukamp学長

3つ目としては、この大学院が掲げるコンセプトに惚れ込んだというところがある(この理由で入学を決意した同級生は非常に多い)。この大学院は、既存のMBA教育に対してアンチテーゼを唱え、さまざまな矛盾に向き合うことを軸としている。西洋的なMBAの良いところは押さえつつ、それを東洋思想や哲学を中心としたリベラルアーツと融合するという挑戦。また、「テクノロジーの進展VS人間性の担保」、「Business VS Society」などといった様々なAntinomy(二律背反)に向き合う答えのない旅路。まさに、自分が7年間起業家として活動するなかで更に思考を深めたいと考えていたテーマで、このコンセプトに強く惹きつけられた。

②実際どんな感じの大学院か?

授業が行われるのは、基本的には1週間に2日間。平日の夜の時間帯の3時間と、週末どちらかの半日~終日というのが基本的な構成だ。

この授業への出席に加え、事前/事後レポートの執筆や課題図書、更にはグループワークなども多いので、当然ながらなかなかの負荷ではある。ただ、現役の起業家であり二人の子どもの子育て真っ最中の自分にもなんとかかんとか両立可能なコースではある。(無論、それは職場の仲間や家族の多大なる協力・理解のもとに成り立っているのであり、僕としては感謝の気持ちしかございません!)。

クラスは英語と日本語のどちらかを決めて入学することとなっており、僕は英語コースに在籍している。1期生は日本語コース・英語コースともに40人程度で、どちらのコースも外国人比率は3割程度という感じだ(日本語コースでも日本語が話せる外国人が多数学んでいて、多様性は一定程度担保されている)。

バックグランドとしては、大企業務めのビジネスパーソンが多い。ただ、官僚やフリーランス、僕のような起業家も各クラスに何人かずつはいるという感じ。個人的には、ここはもう少し幅広くなっていけばいいなぁと感じている。ちなみに年齢層は20代後半から30代後半で、34歳が平均年齢とのこと。MBAとしては年齢層は高めで、いわゆるExecutive MBAに近いカテゴリなのだと思う。

授業にはグループワークも多く、多くのクラスメイトと関係性の質を高める機会がある。ちなみに、いま僕が所属しているグループはブラジル人、スリランカ人、エチオピア人、日本人3人(帰国子女1人・純ジャパ2人)という構成。こういうメンバーで色々な議論をしていくのはなかなかタフだけど、気付きや学びも非常に多い。

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③どんなことを経験し、なにを学んでいるのか?

個人的にすごく良いなと思っているのは、パッチワーク式に色々な科目から選ぶのではなく、全員が同じ事業を履修しながら同時に学んでいくという形式だ(ただし、2年次以降は選択式の授業も増えるらしい)。そのため、すべての授業が関連性を持っていて、さまざまな角度で物事を捉える必要に迫られる。

たとえば、僕はこれまで2クールの授業を受けたのだけど、最初のクールでは「Accounting」と「Finance」とともに「What is Company for?(企業論)」という3つの授業が同時に進んでいき、会計や財務を学びながらも「企業は株主のものなのか?企業はなんのために存在しているのか?」ということをグルグルと考えさせられたりする。

2クール目はもっと激しく、「Science&Technology」で未来の社会を洞察しながら「System Thinking」でシステム思考のいろはを学びながら、「Capitalism」という授業で哲学をベースにしながら資本主義とは一体なんなのかを考え抜くということをさせられた。

つまりは、最先端の方法論やMBA的なベーシックな知識/情報に触れながら、それと同時に、哲学や東洋思想などといったリベラルアーツ系の深い問いを突きつけられるような構成になっているのだ。大学時代にろくに勉強をしてこなかった僕としては、今更ながら脳みそに汗をかくとはこういうことかと実感している感じだ。

また、こうした科目を受講していくことに加え、2年間を通して自分の価値観や軸、将来の展望について考え抜くSelf-Reflection系のプログラムが用意されている。正直自分はこういうプログラムは起業してからさんざん受けてきていたので舐めていたところがあるのだけど、このプログラムのファシリテーターがCTIジャパン創始者の榎本英剛さん(なんたる豪華さ!)で、改めて自分の知らなかった自分が発見できていることを実感している。

④ぶっちゃけ満足しているのか?

ここまで読んでもらってもお気づきかと思うけれど、結論としては、僕はこの大学院に入学して本当によかったと思っている。実は入学直後に自団体の経営で大きめのイシューが起こり、退学することを本気で考えたのだけれど、あの時に踏ん張っておいてよかったと心から思っている。(とはいえ、今後まだ何があるか分かりませんが…)

では、一体なにに満足しているのか。改めて突き詰めてみると、以下の2つの点かと思う。

本質的な問いについて突き詰めて考え抜く経験ができていること

いわゆるMBA的なスキルや知識を身につけることには僕はそこまで興味はなく(もちろんそれも有益だし重要なのだけど)、それよりも、ビジネスや社会の仕組みの源流にある思想や仕組みを突き詰めることができているのが大きい。

「行き過ぎた資本主義のあり方を変えたい」とか「企業が社会課題を解決するのが重要だ」といった考えを僕はずっと持っていた。でも、そもそも誰がどんな想いで資本主義というシステムを作ったのか、また、これからの社会システムとしては何が理想なのかといったことを正面から考えたことはなかった。

また、「企業とは誰のものか?」という問いに、「株主のものに決まってる」と会社法上の定義だけで答えていた自分が、いまは思想を持って「会社とは何なのか」に対して自分なりの軸を持った持論を日英で展開することができるようになれている。

少しずつではあるけれど、こうしてさまざまな事象に対して軸となる思想を持つことができてきていることで、NPOの経営者としても大きなブレイクスルーがありそうな予感がしている。個人的には、ビジネスパーソンだけでなくソーシャルセクターで働く人間こそこうしたリベラルアーツを学んで自分なりの思想・哲学を持っておくべきだと思い始めており、その点で自分はいかに足りないものばかりだったかということを深く反省する日々だ。

最前線で活躍する講師陣とぶつかり稽古をしながら学べていること

僕が昔通っていた国立大学の大学院との比較にはなるが、講師のなかにいままさに現場の第一線で活動している実践家が多いのは、非常に刺激的だ。

たとえば「System Thinking」の授業を担当しているのは、枝廣淳子さん小田理一郎さんというソーシャルセクターの世界では知らない人はいない実践者たちだ。また、世界的にも注目が高まる「Design Thinking」の授業を担当するのは、日本におけるこの分野の第一人者といっても良い株式会社BIOTOPEの佐宗邦威さんだ。彼はいま38歳だが、こうした最前線で活躍する若い実践者から約30時間(3時間半×8回)におよぶ薫陶を受けられというのは、贅沢この上ないことだと思う。なお、今後は平田オリザさんが監修する演劇のグループワークが控えていたりと、これからも様々な第一人者との対話が楽しみでならない。

そして、やっぱり何よりも贅沢だと思うのは、超一流の教育者であり起業家である野田智義さんという傑物に直接稽古をつけてもらえるということだ。僕が野田さんをロールモデルの1人としていたことは先に書いた通りだが、実際に入学してみて、この人は僕なんかが想像できないほどに教育者としても思想家としても怪物だということを、嫌という程に思い知らされた。この21世紀の吉田松陰とも呼べる人物とこれだけ濃密に時間を過ごせていることが、僕としては何よりの財産だと感じている。


・・・と、なんだか美辞麗句ばかり並べてしまったが、これはあくまでも僕の感覚であり、普通の人が懸念する点は沢山あるんじゃないかとも思う。たとえば、まだまだ日本でも世界でも無名の大学院であり、いわゆるネームバリューのようなものは全くない。なので、そうしたネームバリューが欲しい人には向かないかと思う。「まだまだ無名で知る人ぞ知るような学校だけど、むしろ自分が活躍することで名を上げてやる」くらいじゃないと、ダメかもしれない。

また、新設の大学院らしいバタバタ感も相当程度ある(笑)。授業の内容も当初とは結構変わるし、成績をどうつけるかも二転三転したりする。色々なプログラムが走りながら定まっていく感じだ。僕なんかはこういうアジャイルな感じが、一緒になって学びの場を創っているような感じでむしろ楽しいのだけど、ドッシリとした堅牢な感じを好む人にはかなりストレスになるかと思う。。。

⑤この大学院に興味を持った人へ

最後になったけれど、ここまで読んで至善館に関心を持ったという人は、ぜひ今度開かれる予定の説明会に足を運んでもらえたらと思う。詳細は以下から。

☆ 説明会の案内(English/日本語) ☆
※ ちなみに3/18(月)の説明会には僕も登壇することを予定しています

なお、こちらの入学案内を見てもらうと分かるのだが、学費はかなり高い。ただ、ソーシャルセクターの学生やその他一定の条件を満たす学生には結構な奨学金も出るらしいので(僕も実はその恩恵に預かってます)、ぜひ個別に事務局の方々に相談してみることをお勧めしたい。

僕としてはちょっと変わった人、特にソーシャルセクターの人に仲間に加わってほしいと思っているので、ぜひとも説明会に来てもらうとともに、2期生としてジョインして欲しいなと。2期生で入ってきた人とは1年間はキャンパスで時間を過ごすことになるので(僕が留年したら同級生になる可能性も...)、ぜひ我こそはという少し変わった方々、ご応募くださいませ!!

☆2020.6.26 追記
卒業を間近に控えたタイミングでの振り返りも、今度は日本語英語で書いてみました。ご覧下さい!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

G1サミット@沖縄での学び

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この3連休は沖縄で行われたG1サミットに参加。各界のリーダーの方々300人以上と、様々なトピックで議論して脳みそに大汗をかいた。参加したアクアスロン(写真)では信じられないほど身体を追い込むことになったものの、チームの順位は見事に2位!充実した時間でした。

改めて、この素晴らしい機会に心から感謝するとともに、備忘録までに、僕なりの学びと気づきを5点に絞ってメモ。

【1. 第4次産業革命と中央集権国家】
第4次産業革命の時代、テクノロジー活用の局面が変わっている。特にビッグデータは中央集権的な国家と相性が良く、中国はますます台頭している。一方、マイナンバーの活用ひとつ取っても、日本は国を挙げて何かやろうとはなりにくい。自由主義経済が、独裁主義をベースにした資本主義に押されているという時代背景

【2. ソフトからハードへのシフト】
自動運転にしろIoTのセンサーにしろ、いまはハードに価値が置かれる時代になっている。インターネットの世界に閉じたイノベーションには限界が来ているのでは?これまでは大企業がベンチャーに助けを求めてオープンイノベーションを起こしていこうという流れがあったが、むしろ逆の流れが加速していく可能性あり。技術やテクノロジーを持つベンチャーが、ハードのリソースを持つ大企業にアプローチして相互補完しながらイノベーションを起こしていく時代になるかも

【3. 政治の争点と憲法改正】
とにかく社会保障改革に切り込むのが大切。一方、外交と国防も、中国の台頭と北朝鮮の脅威の高まりを背景に、ますます重要性が高まっている。この国は憲法改正の議論にこれまで正面から向き合ってこなかったが、一人一人が思考を停止せずに自分の頭で考えて自身の意見を持つ必要がある。そのことがこの国と世界の平和を考える上でも大切。(このエリアでの自分の不勉強さや、考え切っていなかった怠慢を個人的には痛感)

【4. 異論の重要性とNPOの役割】
異論が挟まれないで物事が決まっていくことは本当に危険。でないと本質的な答えはあぶり出されない。Diversity&Inclusionが叫ばれるが、多様性の意義は議論の精度を高めることにある。そして、これからの社会の方向性を決めるような議論が数々あるいま、NPOセクターの役割とは、マイノリティや弱い立場の人々の声を代弁し、多数派の議論に対して異論を唱えて議論を深めることにある。ここの分野で、自分としてはもっと価値を発揮していきたい

【5. 言葉へのこだわり】
最後に、これは毎回感じることだけど、政治家をはじめとした社会を動かすリーダーたちは、本当に喋りが上手い。今回は小泉進次郎さんも来ていたが、彼が「言葉に体温と体重を乗せるようにしている」とか、「一期一会ではなく、一期一語一会といってもいいくらい、一語に対する情熱と執着を考えている。特に出だしの掴みの見極め(フワッといくかトップギアでいくか)に全てをかけ、人を惹きつけようと努力している」とか、「自分の話し方と立ち振る舞いを改善するために、自分の演説をビデオに取って恥ずかしい自分に向き合っている」とか語っているところに、政治家としてのプロフェッショナリズムを感じた

というわけで、この刺激を生かして明日からも頑張ります!!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
☆ Amazonランキング キャリアデザイン部門ベストセラー1位を獲得
☆ ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2016 年間17位

役割を演じることで、わかりあう ~1日保育士をやってみて~

先週、仕事を1日休んで娘の保育園で「1日保育士」なるものを体験した。

これは、保育園に通う子どもたちのパパやママが1日だけ保育士になって子どもたちと時間を過ごすというもの。子どもたちと公園に行ったり、紙芝居を読んだり、寝かしつけをしたり、一緒に食事をしながら「見習い保育士」として1日を過ごす。

子どもたちのパワーに圧倒されて疲労はかなりのものだったけれど、最高に楽しくて幸せな時間だった。でも、何より意義深かったのは、保育園の子どもたちが普段どんな風に過ごしているのか、また、保育園という場所がどのように運営されているのかを体感できたことだった。

たとえば、保育士さんたちの仕事の幅広さには本当に驚かされた。今回僕が体験したのは業務のほんの一部だけれど、それでも、数十人の子どもたちを連れて外を散歩するときの神経の使い方や、子どもが体調を崩したときに求められる迅速な危機対応などなど、僕が想像もしていなかったような数々の大変さが、そこにはあった。

この保育園に娘を通わせて3年以上になるわけだけど、保育園について知らないことだらけだったと思い知らされた。


わかりあえないことから

ちょっと話は変わるけれど、年末年始に読んで面白かった本に、平田オリザさんの『わかりあえないことから (講談社現代新書)』がある。(Sow Experienceの西村琢さんから「大地が好きそうな本を見つけたから、ぜひ読むように」と勧められたのだけど、名著でした。感謝!)

少し時間が経っているので正確ではないかもしれないが、『共感とは、互いにわかりあえないことを前提に、それでもわかりあえる部分をけんめいに探っていく営みである』というようなことが書いてあった。

そして、平田さんは演劇を学校教育に組み込むことで、互いの立場を分かりあうコミュニケーションの大切さを子どもたちに伝えているのだという。普段とは違う役割を演じ合うことで相手の立場をわかりあおうとする共感力がつくというのが、平田さんの考え方だ。

たとえば今回僕が「保育士」という役割を少し演じたことでも、あきらかに保育士さんたちとわかりあおうとする姿勢は増したと思う。無論たった1日だけで保育士さんの仕事を理解したなどというつもりはないけれど、それでも、僕はこれから先、保育士さんに対して軽率な不平・不満をこぼすことは二度とないような気がする。

だからというわけではないけれど、「役割を演じることで共感力を高める」という平田さんの考え方に僕はすごく共感する。

平田オリザさん
↑平田オリザさん

そして、もっと言えば、「共感力」を高めて他の誰かとわかりあおうとすることの重要性が今ほど高まっている時代はないんじゃないかと僕は思う。

残念なことに、いまの社会は、あらゆる意味で「分断の時代」を迎えてしまっている。

資本主義経済の恩恵にあずかる者と、それによって搾取される者。
権力のある中央にいる者と、辺境に身を置いている者。
ポピュリズムに熱狂する者と、それを批判する者。
あるいは、サービスを提供する者と、それをただ受容する者。

ありとあらゆるところに「わかりあえない主体者たち」がいて、それが積み重なって、社会の分断が限界を迎えているように感じる。そんな時代において、大袈裟かもしれないけれど、互いの役割を演じ合ってわかりあおうとすることにこそ、この社会の分断を食い止める力があるように僕には思える。

僕たちクロスフィールズが7年間取り組んでいる留職というプログラムも、ある意味では「役割を演じる」活動だ。日本の大企業で働く人たちに、発展途上国での社会課題の解決に取り組むNPOの職員という役割を演じてもらっている。これによって、自分とは全く違う立場の人たちがどのような想いでどんな仕事をしているのか、そのことに国籍やセクターを超えて想像力を働かせてもらえるようになってほしいというのが、このプログラムにかける想いだ。

当たり前だけど、誰かの役割を演じるために、必ずしも留職のような大きな仕掛けが必要なわけではない。

幼稚園や学校のPTAで役職を担うことや、NPOやNGOの活動にボランティアとして参加してみることでもいい。あるいは、僕がやったような「1日保育士」というのもけっこオススメだ。どんなに小さなことでもいいから、誰かの役割を演じて違う世界を見ることで、きっと物事の捉え方は少しずつ変わっていくはずだ。

もちろん、演じることですべてわかるなんてことはないし、平田さんも書いているように、人と人なんてどうせわかりあえない。でも、それでも諦めずに少しでも誰かのことをわかりあおうとする努力を続けていけば、社会の分断という状況も少しずつ変わっていくと僕は信じたい。

・・・と、徒然なるままに書いたものの、要するに、「あー1日保育士やってよかったー」ということです。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
   『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
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