僕が株式会社ではなくNPOで起業した理由
- Day:2012.02.26
- Cat:経営ノート
プログラムを提供してその対価を頂くという、極めてシンプルなものだ。
それだけに、「なんで株式会社にしなかったの?」という質問をよく聞かれる。
これは非常に真っ当な質問で、実際、自分たちも組織形態をNPO法人にするのか
株式会社にするかということで、さんざん悩んだという経緯がある。
結局自分たちはNPO法人を選んだわけだが、起業して約1年が経ってみて、
自分たちの組織の特性を考えれば、これはとても正しい選択だったと改めて思う。
今日はちょっと、そう思う3つの理由について書いてみたい。
① 想いを同じくする仲間と一緒に事業を進めたい
NPO法人の名刺を出して挨拶すると「NPOって利益を出しちゃいけないんでしょ。大変だねぇ」と
色々な人に決まって言われるのだけれど、これは実は全くの誤解だったりする。
NPO法人に対する制約とは「利益を組織の構成員(役員・会員)に分配しない」というものであり、
利益が出たら、その分は社会的に意義のある事業にさらに投資するというのがルールだ。
NPOを"Nonprofit"と読むと、まるで「利益を出してはいけない組織」のように聞こえてしまうが、
NPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんなどはNPOを"Not-for-profit"と捉えるべきだと主張している。
こう捉えると「NPOとは利益のためではなく、使命のために存在する組織」のように聞こえて、
僕としても、こっちの方がNPO法人の性質をきちんと表しているんじゃないかと思っている。
…と、少し前提の説明が長くなってしまったけれど、いずれにせよ、NPO法人を名乗るということは、
「お金のためではなく使命(ミッション)のために活動しているんです!」という明確なスタンスを
表明することに他ならないのだ。そして、このようにして自分たちのスタンスを表明することは、
ミッションに共鳴してサポートをして下さる方々と出会う確率は間違いなく高めてくれる。
実際、いまクロスフィールズがお世話になっているアドバイザーの方々の顔ぶれも、NPO法人としての
活動だからこそ実現したものだと思うし、メディアの方々からご関心頂くのも、NPO法人として
ミッションや志をベースにした活動をしているからこそ注目して頂いていることがとても大きい。
そして何より、スタッフや正会員として活動に参画してくれているメンバーたちも、やはりミッションに
共鳴してもらっているからこそ、熱くて前向きで最高な仲間たちが集まってくれるのだと思う。
この1年間を振り返ってみて、こうしたミッションに共感する仲間たちのサポートを結集することでこそ、
なんとかかんとか事業を進めてこれたのだと思う。そして、こうして多くの仲間たちのサポートを集める
上では、NPOの持つ「ミッションのための組織」という明確なメッセージが、大きな力になっている。
② 途上国のパートナーと同じ立場に立ちたい
2つ目の理由は、自分たちの事業の特性に紐付くものだ。
自分たちの運営する「留職」という事業は、途上国の団体とのパートナーシップなしには考えられない。
企業人を途上国のパートナー団体に派遣して業務にあたって頂くにあたって、仲介する立場にいる
自分たちが絶対に守らなければならないのは、現地の団体にとってプラスとになる活動になっている点だ。
これを実現するのは、実は簡単なことではない。自分たちが企業の側だけを向いて活動をしてしまえば、
企業側にはメリットがあるものの、現地の団体にとっては負担でしかないようなプログラムになりかねない。
だからこそ、自分たちがNPO法人という現地のパートナー団体と同じ立場に立つことで、
お金の出し手である企業に対しても、現地の声を代弁して"NO!"と言えるようになる必要があった。
僕たちはNPO法人という組織形態を取ることで、迎合しないという姿勢をハッキリさせたかったのだ。
③ NPOで働くことを、もっとカッコよくしたい
最後の理由は、自分たちの夢や想いといった要素が強い。
NPO法人で働くということは、残念ながら、現在日本の一般常識では当たり前の選択肢ではない。
NPO法人の名刺を出すと「それで、本業の方は何をされているんですか?」という、
あまりにも悲しい質問を投げかけられることだってあるのが日本社会の現状だったりする。
実際、ある調査によれば、日本のNPO法人の職員の平均給与は200万円を下回っているという。
これではNPOで働きたいと考える人の数がなかなか増えていかないということも納得できる。
どんなに強い志を持っていても、自分の今後のキャリアや養うべき家族のことを考えたら、
最低限の収入や、業務経験がキャリアとして認められるといったことは、とても大事なことだ。
クロスフィールズのビジョンの1つは、「企業・行政・NPOがパートナーとなる世界」の実現だ。
社会課題が複雑化・多様化していく日本において、社会課題を解決する専門家であるNPOの存在意義が
ますます高まっていくことは間違いない。でも、にもかかわらずNPOのセクターを支える人材が脆弱すぎる。
だから、NPOというセクターで働くことを、もっともっと魅力的にしていくことが必要だと僕は思っている。
そのためにも、まずは自分たち自身がNPO法人として事業を成功させ、
働きながら社会を変えていて、スキルも磨けていて、さらに十分にお金ももらえるような、
そんなカッコいい団体になり、この業界のロールモデルのような存在になりたいと思っている。
ちなみに、最後の最後でNPO法人での起業にしようと決意したのは、
ほとんどこの3つ目の理由だったりする。結局は、"ロジック"よりも"想い"なんですよね。
以上、僕がNPO法人での起業を選んだ3つの理由を書いたけれど、
もちろん何か決まった答えがあるわけではない。
大きな初期投資が必要なモデルだったり、事業拡大のために株式市場からの
資金調達が必要なんであれば、株式会社の方が圧倒的に使いやすいと思う。
大事なのは、自分がこれから進むべき道を見据えて、その道を走っている
自分を想像したときに、どっちの乗り物の方が走りやすいのかを考えることだ。
僕たちクロスフィールズにとっては、たまたまそれがNPO法人だった。
ただ、それだけなんです。
NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715)
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