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トライセクター・リーダーとは?

ちょっと前だけど、Harvard Business Reviewの2014年2月号に
「トライセクター・リーダー:社会問題を解決する新たなキャリア」
という特集があった。最初は記事を読んでもフーンというくらいの
感じだったけど、なんだか最近この言葉がすごく気になっている。


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http://www.dhbr.net/articles/-/2331
(↑興味ある人は、ここから該当の記事が購入できるらしいです)


そもそもトライセクター・リーダー(Tri-sector Leader)とは、
企業・行政・社会という3つのセクターの垣根を超えて活躍する人材
のことを指すのだそうだ。

さて、ではなぜいまそんな概念に注目が集まるのか。

社会課題を全て行政が解決する時代は終わったが、かといって
民間企業が行政に変わって全ての課題を解くことはできない。
そこでNPOをはじめとした社会セクターにも注目が集まってきて、
セクター間の境目というものは急速に曖昧になってきている。

ここまでは、僕のマニアックなブログを読んでくれている方ならば
きっと賛同してもらえる時代認識だと思う。(と、信じております…)

さて、そんな背景を考えると、これからは各セクターの知見を
集結させていくことが益々大事になってくるわけで、そんな時に
必要なのが、企業・行政・社会という3つのセクターそれぞれに
精通しているトライセクター・リーダーなる人材だというわけだ。

(余談ですが、このリーダー像はクロスフィールズという組織が
 事業を通して創りたいリーダーの姿とも極めて近しいです)

なお、論文の中ではトライセクター・リーダーに共通した
特徴として、以下の6つの要素が挙げられている。

1. 理想と実利をともに追求する
2. 無関係に見える状況の類似性を見抜く
3. 状況判断力に優れている
4. 知的専門性を高める
5. セクター横断的な人脈を築く
6. 心構えを忘れない

僕にはピンと来るものもそうでないものもあったが、
特に「3.状況判断力」は確かにそうだなぁと思ったりする。

たとえば、僕がトライセクター・リーダーという言葉を聞いて
イメージする人たちというのは、何かの課題を見つけた時に、
その課題を「誰が」「いつまでに」「どのように解くべきか」
という答えを出すまでのスピードが圧倒的に早いし、正確だ。

「この国の課題の場合、民間企業が取り組むのはしんどいよ。
国連の××部隊が出てきたら半年くらいで目処を立てられる
んじゃないかな。NGOの出番はその後だと思うなぁ」

「雇用問題のこの課題は、まずは行政が法整備をしないと
企業とかNGOがいくら騒いだってだめだよ。確か××省の
事務次官の××さんがこの課題にはアツかったはずだから、
まずは今月末までに彼と会議体を持つのが大事だと思う。
あ、××社の××社長にも会議には絶対に出てもらおう」

こういう判断を瞬時に導き出せる肌感覚を持っていることは、
これからの時代を切り拓くリーダーには必要なことだと思うし、
それには、色々なセクターをまたいで働いた経験が必須だ。


ちなみに僕の場合、ビジネスの世界にも少しは足を突っ込んだ
ことのある社会セクターの経営者なわけで、そのことは企業と
協働を進める上ではかなりプラスに働いている。

でも一方で、自治体や省庁だったり国際機関などといった
公的セクターの視点が僕には欠けていて、そのことがNPOの
経営者として大きな弱みになっていると最近すごく感じる。

21世紀を生きるNPOの経営者としては、もっとバランスよく
セクターの垣根を超えて物事を考える力が必要なんだと思う、、、

ちなみに、Harvard Kennedy Schoolのジョセフ・ナイ教授は
トライセクター・リーダーのことを「トライセクター・アスリート」
呼んでいるらしいが、直感力に優れた行動力溢れるリーダー
という意味合いで、僕的にはこの表現がすごくしっくりと来る。

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↑ジョセフ・ナイ教授


最後に、論文のなかで著名なトライセクター・アスリートとして
名前が挙げられていたアメリカ人は、たとえばこんな人たち。

バラク・オバマ氏 (政治家になる前は人権派弁護士として社会活動を展開)
ビル・ゲイツ氏(マイクロソフト経営者から慈善財団経営者へ)
アル・ゴア氏(政治家から慈善活動家へ転身、今は企業顧問も掛け持ち)
シェリル・サンドバーグ氏(世界銀行から民間企業の世界へ)

最後に、日本のトライセクター・リーダーとして僕の頭に思い
浮かんだ人たちの名前を、独断と偏見で勝手に挙げておきたい。
(一応、順番だけは五十音順で並べてみました)

・駒崎弘樹さん
言わずと知れた社会起業家の草分け的存在。学生時代はITベンチャーを
経営し、その後NPO法人フローレンスを立ち上げて社会セクターに転じる。
政治や行政とも絶妙な距離で付き合いながら社会変革を仕掛け続ける。

・高橋大就さん
外務省からマッキンゼーに転身し、現在はオイシックスの海外事業部長と
「東の食の会」という社団法人の事務局代表を兼任するという凄まじい職歴。
まさにトライセクター・アスリートの申し子といったキャリアを歩んでいる。

・中村俊裕さん
マッキンゼーを経て国連(UNDP)に転じ、東ティモールやシエラレオネなど
途上国の開発支援で10年間従事。その後、国連のときの仲間たちとともに
米国NPO法人コペルニクを立ち上げ、国際協力の世界に新風を巻き起こす。

・藤沢烈さん
飲食店経営、マッキンゼーを経てコンサルティング会社を起こして独立。
震災を機に社会セクターでの活動に活動の軸を移し、RCF復興支援チーム
という社団法人の代表として、時には政府の官僚として復興現場で活躍中。

・船橋力さん
伊藤忠商事を経てウィル・シードを設立。その後、Beyond Tomorrowや
TABLE FOR TWO InternationalなどといったNPOの立ち上げ・経営に参画し、
現在は文科省の官僚として「トビタテ!留学JAPAN」のプロジェクトを指揮。


きっとこういう人たちが、これからの社会を面白くしていくんだと思う。
そして、僕もこんな人たちと一緒に、頑張っていきたいと思います!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。

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