INSEAD Social Entrepreneurship Programme(概要編)
- Day:2015.12.06
- Cat:NPO関連エッセー

11月29日から12月4日までの6日間、INSEADというビジネススクールが
シンガポールで開催したINSEAD Social Entrepreneurship Programmeという
社会起業家のためのExecutive Educationのコースに参加してきました。
■ コースの公式ウェブサイトはこちら
http://executive-education.insead.edu/social-entrepreneurship
2006年に始まった、世界的にも珍しいSocial Entrepreneurshipをテーマの
中心にした短期集中のコースで、これまでフランスとシンガポールで計19回に
渡って開催されているとのこと。過去には600人以上が参加しているものの、
聞くところによると日本人はこれまで数人しか参加していないので、日本での
認知度はほぼ皆無という感じだと思います。(ちなみに、僕はラオスで活動
するドイツ人の社会起業家の友人に勧められて存在を知りました。)
今回このコースに参加することをFacebookにポストしたところ、マニアックな
人もいるもので(笑)、多くの人から個別に問合せを頂きました。僕としても、
参加した感想として、ぜひ多くの日本人が参加したらいいのではと思ったので、
今後このコースに参加しようと考える人のために、「概要編」と「学び編」の
2回に分けて、今回の経験を記事としてまとめておこうと思います。
この記事が、少しでも日本のソーシャルセクターの発展に役立てば幸いです!
以下、このコースの概要と僕個人としての所感になります。
※ 情報量が多いため、少しログ的な記載方法になってることお許し下さい。
※ ここでの記載はあくまでも今回のコースを経験しての僕個人の主観に
基づいたものであることを理解して読んで頂けたら幸いです。

【コースの参加者】
・毎回だいたい30人前後が参加
・僕が参加した回は少し参加者が少なくて、26人の参加者
-国籍は、インドネシア4人・インド4人・イギリス2人・南アフリカ2人・
ポルトガル2人・ウガンダ1人・オランダ1人・オーストラリア1人・
ブラジル1人・香港1人・バングラ1人・シンガポール1人・ネパール1人・
フランス1人・タイ1人・フィリピン1人・日本1人(僕)と幅広い
-バックグランドとしてはは、1/3がTraditional NGO、1/3がいわゆる
Social Entrepreneurで、残りがImpact Investerと大学関係者(MBAの
教授で、これから社会起業家コースを開きたい人たち)という感じ
-多くの人がCEOかExecutive Directorといった感じの肩書きなものの、
ポジションに就いてからの期間は5年以内という人が多く、参加前の
僕の予想には反して、比較的キャリアの浅い人が多かった
-参加者の年齢は20代後半から30代中盤で7-8割か。残りは40-50代
【講師】
・6日間のコースを、計5人の講師陣が変わるがわるに担当
-うち2人が最初から最後まで監督してくれて、面倒見は非常に良い
-講師の国籍は、アメリカ2人・ポルトガル2人・インド人1人
・講師はINSEADの教授陣の中でもSocial Entrepreneurについて研究をして
いる学者たちで(専門はStrategyやInnovation)、レベルは極めて高い。
多くが社会起業家としての実践も積んでいるので、説得力もある
・指導方法としては、ケースを活用しながら理論の説明と議論を進めつつ、
実践家が集まっていることを意識して、参加者各自の活動に当てはめたら
どうなるかを常に問われ、そこまで落とし込むことが重視されている
【クラスの雰囲気】
・授業はインタラクティブで、講師の説明と参加者の発言が半々くらい。
ブレイクアウトセッションも設定されて、チーム別の議論も多い
・やはり英語Nativeの英国人・インド人の発言が目立つものの、
ダイバーシティを大切にしようとする雰囲気がクラス全体にある
・ソーシャルセクターの中でもビジネス系とNGO系の両方の人種が
混ざっている感じで、非常に多様な意見が出ている
・特にテストがあるわけではなく、実務家たちが学びに来ているという
感じなので、雰囲気としてはとても協力的でポジティブな印象

【スケジュール】
・鬼のように忙しい。本業を離れて少し中長期的なビジョンを考えたいと
いうモチベーションだった僕としては、かなり面食らった感じ
・セッション自体は毎朝8:30に始まって20:00くらいまで続く。その後も
メンターセッションや懇親会などがあり、開放されるのは23:00くらい
・上記に加えて、ケーススタディに向けて毎日10-30ページくらいの資料
を読み込む必要がある。結局、早朝か深夜のどちらかにやることになる
・Dialogue in the Dark Singaporeを経験するという体験型の活動もあり
・当然ながら日本は平日なわけで、多くの場合にはこれに加えて日本との
やり取りが発生する(参加する方には、この期間に本業での作業の予定
を入れることは基本的に勧めません)
ちなみに、コースのスケジュールはこんな感じです。

【このコースで学べる主な内容】
◇Social Entrepreneurの役割と、いま彼らが最前線で抱えている課題
◇様々なタイプのSocial Businessの成功事例/失敗事例とその要因
◇Social Impactを生み出すために取るべき5つのステップと、
各ステップで必要となる考え方と課題を突破するための戦略
◇Social EntrepreneurがImpactをScaleさせるためのフレームワーク
◇Social Entrepreneurに求められる実践的スキル(エレベーターピッチ、
ネゴシエーション、クリエイティブ思考法、大組織の動かし方、など)
◇企業内のSocial Entrepreneurに求められる役割とそこでの課題
◇Social Impactの測定方法と、その測定方法のあり方
※ 学びの詳細については、よければ「学び編」を参照して下さい
【日本から参加をお勧めしたい人】
・NPO法人/株式会社を問わず、社会課題解決を目指す組織の代表者/幹部
-特に、これからスケールアップすることを志向するステージの人
-団体の事業を再構築する必要があると考えている人
・ソーシャルセクターで中間支援的な役割を果たしている方
・ソーシャルセクターをテーマに研究・指導しているアカデミックの方
【参加費/次回の開催】
・授業料は約60万円(シンガポール:6,800SGドル、フランス:4,300EURO)
というイメージ。これに加えて渡航費・宿泊費も必要になる
・ただし、詳しくは言えませんが、僕はNPO枠だったということでINSEADに
幾分か奨学金をもらうことができた。加えて、JANICの海外スタディプログラム
研修の制度で金銭的サポートをして頂いた(本当に有難うございます!)
・次回開催(2016年)は、シンガポールが11/13-11/18で、フランスでは
11/27-12/2となる見込み
【参加要件/求められる英語レベル】
・どの程度厳格かは不明なものの、書類審査に合格する必要あり
・社会起業家としての実務経験が必要と書いてあったものの、実際には
サービスインして間もない人も多く、あまり気にしなくていいか
・英語が母国語ではない人も多いものの、英語はそれなりにできないと
相当に痛い目を見る。海外大学院に入れるくらいの英語力はあった方
が無難だと思う(僕の場合、普通の授業には何とかついていけたものの、
ディスカッションのリード役になった時とかは相当に辛かったです...)

【所感】
※ このパートは特に完全なる主観なのでご注意を!
[オススメする点]
・とにかく講師の指導の質が高い。4時間連続の授業も全く飽きないレベル
・最先端のケーススタディをもとに、理論と実践の両方を学ぶことができる
・日本で既に何度も紹介されているケースも、全く違う切り口で学び直せる
・非常にダイバーシティのある参加者が集まっていて、世界中の様々な立場
の人たちの意見を聞くことができ、議論することができる
・世界中から社会起業家が集まっているという環境で、自分のモデルは世界
からどう評価されるかを知れて、改めて事業の価値を考え直すことができる
(「あなたの事業、ここが面白いね」と言われる観点が、日本とは全く違う
ことがあって、信じられないほど多面的に事業を捉え直せます。実際、
休み時間の雑談からの学びが相当に大きかった気がします)
・世界中の社会起業家たちとのネットワークができる(過去に参加した600人
以上の卒業生たちとSNSなどで繋がれます。1年に1回のGatheringもあり)
[オススメできない点]
・とにかく参加費が高い(ただ、僕もそうですが、大きな投資をすると、
その分何とかして学んで来ようという意思が働いていいのですが、、、)
・非常に幅広いトピックをカバーするので、全方位的に興味がある人には
有益な内容なものの、一部のみ興味がある人には費用対効果が低い
・僕もそれなりにソーシャルセクターについて勉強してきたこともあって、
紹介される事例自体は既に知っているものが多かった(日本語で手に
入る情報量はかなり多いという現在のありがたい環境に改めて感謝)
・とにかく忙しいので、コース中はゆっくりと事業を振り返るような時間
は取れない。かなり意識して、特に事後の内省の期間も設ける必要あり
・1週間と期間が短いので、当然ながら1人1人に対するそこまで手厚い
フォローはない(この点、やはりETIC.の運営する社会起業塾のモデルは
起業家支援のプログラムとしてグローバルレベルだと改めて実感)
長々と書きましたが、以上です。
NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715)
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
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