官僚の皆さん、どうしてNPOに出向しないんですか?
- Day:2016.06.07
- Cat:NPO関連エッセー
あまり知られていない事実だが、2014年に官民人事交流制度なるものが人知れず改正された。
これにより、中央省庁から民間に出向する際の出向先が企業以外にも拡大され、学校法人やNPOにも出向することが可能になった。実際、この制度を活用して経済産業省から学校法人に教員として出向中の方もいるなど、官僚の出向先の幅は大きく広がったのだ。
これまでも、官庁と民間企業との間では、多くの人材が出向することで様々な交流をしてきた。これによって、互いの仕事の進め方を学び合うとともに、どのような連携を図るべきかを両者で考えてきたわけだ。
そしてこれからは、行政とNPOとの間で、こうしたセクター間の連携が促進されるわけだ。これまでは霞が関のオフィスでデスクにかじりついて大量の資料とヒアリングをもとに法案を書いていた官僚が、NPOに出向して草の根の現場で思い切り汗を流す。そして、そこで見た生の情報をもとに、心の通った現場目線での法案を書くようになる。行政・企業・NPOという3つのセクターが一緒になって社会課題を解決していくことが必要とされる「トライセクター」の時代、まさにこうしたセクター間の人材交流の動きは歓迎されるべきものだ。
その意味で、2014年の法改正は非常に画期的なものだったわけだ。
が、しかし。こんなに素晴らしい法改正があったにもかかわらず、残念ながら、行政からNPOへの出向は日本ではまだ一例も実現していない。
一体なぜなのか。もしかしたら法制度上で何かの課題があったり、金銭的に無理があるなどの事情があるのでないか。不思議に思った僕は、関係者に色々と聞きまわってみた。そして、その結果分かったのは、単純に「情報が届いていない」ということが大きな要因となって、行政からNPOへの出向は実現していないということだった。
まず、そもそも法改正によってNPOへの出向が可能になったという情報を、当の官僚の方々はほとんど知らなかった。また、仮に知っていたとしても、実際に出向を受け入れたいNPOが本当にあるのか、また、自分がNPOに出向したらどんな仕事をすることができるのか、そのイメージがついていないのだ。
そんな情報のミスマッチだけが要因なら、なんとか壁は突破できるのではないか?
そんな想いから、官民協働ネットワークcrossover、新公益連盟、そして僕たちクロスフィールズとの共催で、去る5月28日(土)に「セクターの壁を越えて活躍できるリーダーを目指して。求む!行政-NPOの人材交流のパイオニア」と題したイベントを開催した。
このイベントでは、実際にセクターの枠を超えて働いた経験を持つ人たちの経験談をベースに越境経験の意義を訴えるとともに、実際に官僚の出向を受け入れる意思のあるNPOの代表者たちが登壇し、NPO出向の第一号候補者に向けてメッセージを送った。フローレンス、カタリバ、ETIC.、RCFといった日本を代表するNPOが、給与面も保証するという意思も込め、全力で官僚の出向を呼びかけたのだ。
当日の会場の熱気はすごいものだった。100人収容の会場は多数のキャンセル待ちが出るなど満員御礼で、多くの現役官僚たちも参加してNPOの話に熱心に耳を傾けていた。このイベントだけで何かが動くかは分からないものの、「自分が第1号のNPO出向者になりたい」という声も数多く聞かれるなど、多くの官僚がNPO出向に対して意欲を示していたことは確かだった。
厚生労働省の官僚がフローレンスに出向して保育の現場を経験する。
文部科学省の官僚がカタリバやTeach For Japanに出向して教育の現場を経験する。
内閣府や復興庁の官僚がRCFに出向し、東北や熊本の復興の最前線で汗を流す。
外務官僚がクロスフィールズで新興国のNGOと仕事をし、新しい国際協力のあり方を考える。
そんなことが起こったら、世の中の課題解決はもっともっと進んでいくと思うのだ。もちろん、特定の団体に関係省庁から出向があると癒着の問題が懸念されるという指摘もある。ただ、それは民間企業への出向でもあった話で、色々と工夫をすれば超えられる課題のはずだ。
なんとかして、そんな日本社会の課題解決を一歩進めるような動きが出てきて欲しい。
あとは、誰か1人、パイオニアが出てくるのを待つだけだ。
官僚の方々、どなたか手を挙げてみませんか?全力でサポートしますよ!
小沼大地(@daichi0715)
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
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