これからの世界を変える人材になりたいなら、もっと堂々とHになるべき
- Day:2016.12.25
- Cat:日々の考えごと
さて、こちら元ネタは、ハーバード・ビジネス・レビューの2017年1月号に掲載された「境界を超える"H型人材"が、世界を変えていく」というタイトルの入山章栄先生の論文だ。(「世界標準の経営理論」というタイトルのこの連載は毎回示唆に富むが、個人的には、社会学編に入ってからのここ3回の論文は特に参考になる)

ストラクチャル・ホールという理論をもとに展開された今回の論文では、以下のようなことが力強く論じられていた。
・日本企業が伝統的に好むのは、1つの分野に精通する"I型人材"だった。日本の人材育成の世界では、それをベースとして、「1つの専門性の軸を深く縦方向に持って、後は多様な知見を持つ」という"T型人材"がこれまで注目されてきた。
・しかし、いま日本で大きな活躍をし始めているのは"T型人材"ではなく、「二本以上の縦軸があり、その間を往復している」"H型人材"である。
・異なる業界を跨って専門性を積み、境界を超えて越境するH型人材の代表例には、WiLの伊佐山元氏(日本の大企業文脈とシリコンバレー人脈をつなぐ)や、ヤフーCSOの安宅和人氏(脳神経科学とビジネスの世界とを行き来)がいる。
・これからの社会を動かす人の多くは、間違いなくH型人材になるだろう。

↑早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生
僕は入山先生の考えに激しく賛同するのだが、同時に、ここ数年は同じような話を別の角度から色々と聞かされているような気もしている。
たとえば数年前のハーバード・ビジネス・レビューに掲載された「トライセクター・リーダーシップ」という論文。企業・行政・NPOという3つのセクターを行き来する人材がこれからの時代をつくるという話で、これはまさにH型人材の話だった。
また、前回の僕のブログ記事で取り上げたリンダ・グラットンの『LIFE SHIFT』でも、寿命100年時代にはこれまで属していない「多様性に富んだ新しいネットワーク」が重要になると指摘されていたが、この考え方もH型人材に通じるものがある。
もはや時代の流れとして、I型・T型からH型へのシフトというのは、当然のことになっているようにすら感じる。実際、日本でも出向やら副業・兼業が徐々に奨励され始めていることや、プロボノ・留職といった概念が話題になっているのも、この流れなのだと思う。
だが一方で、残念ながらこうした考え方はまだまだ日本では一般化はしておらず、ごく一部での周辺的な動きにすぎない。いまも1つの組織で脇目も振らずに成果を出すことがキャリアの王道だと考えられているし、H型人材になるような動きは、まだまだ敬遠されているように感じる。
では、それはいったいなぜなのか。
僕は単純に、H型人材になることが、周囲からの批判にさらされやすいからなんだと思う。
H型の人間になろうとする活動は、I型やT型の人間からすれば、自組織に対する浮気行為だと見なさがちだ。「自分の専門分野で結果も出してないのに、色々と目移りばかりしちゃってさ」という陰口を叩かれるし、活動が明るみに出ると、「あいつは仕事もしないで、好きなことばかりしやがって・・・」といった批判が飛び交うことになる。
伊佐山さんや安宅さんのような圧倒的な結果を出した人であれば別だが、そうなる過程では、目立てば目立つだけ妬みや批判の対象になるわけだ。まさに、「出る杭は打たれる」状況だ。周りを気にせず我が道を行くタイプであったり、周囲の批判があっても跳ね除けるような胆力がないと、なかなかH型人材を志向できない。普通は、やっぱり批判されるのが怖くなってしまう。
そんな中、僕の友人に、大企業のなかでこうした活動の旗振りを狂ったように続けているH型人材の男がいる。

彼の名は、濱松誠(はままつ・まこと)、通称マック。パナソニックに勤める僕と同い年の34歳だ。いま東京のベンチャー企業に出向中の彼は、5年ほど前に社内の若手有志ネットワークであるOne Panasonicを起ち上げ、ボトムアップで会社を変えようと、パナソニックに社外との接点を積極的に創るなど、様々な動きを仕掛けている。
この動きは日本中に広がりそうした日本全国の社内ネットワークをつなぐOne JAPANという団体も、彼が中心になる形で今年起ち上がった。最近ではメディアも彼の展開する活動には大いに関心を寄せていて、彼自身も先日の日経ビジネスの「次代を創る100人」に選ばれるなど、注目度が一気に高まっている。
あまり内実は良く知らないけれど、これだけ社外で目立てば、当然、社内での妬みや批判も沢山あるんだと思う。僕の周りにも、「One JAPANとかってのができて注目されてるけど、なにをやりたいのか意味分からん」という声をチラホラ耳にするし、出る杭を叩こうとする動きが、盛り上がり始めているんじゃないかと思う。
ただ、きっと彼自身もそうした声があることは百も承知だし、それも分かった上で、あえて自分の役目として目立とうとしているんだと思う。この勇気は相当なものだと思うし、実際、僕はここまでの動きができる大企業勤めの同世代を見たことがない。なにより、彼が組織を飛び出して起業したりせずに(きっといくらでもチャンスはある)、大企業のなかで敢えて挑戦を続けるという姿勢には心から敬意を表したいし、全力で応援をしたい。彼のような存在が更に応援者を増やし、徐々に社内外で市民権を得ていくことで、日本社会においてもH型人材がもっとメインストリームになっていくからだ。
個人的には、彼にはこれからもどんどん暴れまくって欲しい。MITメディアラボ所長の伊藤穰一さん風に言えば、「出過ぎた杭は打たれない」ような気がするので、このまま思い切り目立ち続けることが、実は彼にとっては最大の防御にもなる気もしている。
おそらく、特に大企業の中でH型人材を志向している人には、陰に隠れてコソコソと活動をしている人が多いように思う。でも、彼の活動なんかを見ていると、むしろ大事なのは思い切りのよさだったり、派手さのような気もしてくる。だからぜひ、組織の外で活動をして何かを起こしたいって人は、もっと胸を張って堂々とエッチになるべきだと思うのです!
って、今日はなんだか最後まで、すみません。。。
NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715)
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
☆ Amazonランキング キャリアデザイン部門ベストセラー1位を獲得
☆ ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2016 年間17位
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