中村哲さんに頂いた言葉
- Day:2019.12.05
- Cat:NPO関連エッセー

今日はアフガンで命を落としたペシャワール会の中村哲さんのことをずっと考えている。彼の訃報は悲しくてならないけれど、タリバンが「犯行への関与を否定する声明」を出すという普通なかなか起きない事態が、現地社会が中村さんやペシャワール会のことをどれだけ信頼していたのかを物語っている。同じ日本人として、本当に誇らしい。
たまたまではあるけれど、僕は昨年9月に中村哲さんの講演を聴き、その後、個別にもお話する機会を頂いたことがある。追悼の意も込めて、その時に印象に残った中村さんの言葉を、ここに書いてみたいと思う。
「僕はとにかく逃げ足が遅い。だから逃げ遅れて、いまもこうしてアフガンで活動をしているのだと思う」
「医師として1人1人を救うことは大いなる喜びだった。でも、灌漑事業で数千人を一気に助けられるのは存外の喜び。これ以上の幸せはない」
「実はアフガンでの活動に集中していて、自分の実の子どもが亡くなる瞬間に立ち会えなかった経験がある。でもその時も、自分のやっている事業によってアフガンの子どもたちの命が数千人救えているという実感があったので、それでいいと思えた」
「これからの時代、どんな人を育てていくべきか。誰か泣いている人がいたら、『どうして泣いているの?』と駆け寄ることができる気立ての良い子どもが増えてほしい」
「誰かに裏切られたと思っても、すべてを憎まないことが大切。その部分だけではなく、良い面もあると信じて、クヨクヨしないということが何よりも大切」
「ちょっと悪いことをした人がいても、それを罰しては駄目。それを見逃して、信じる。罰する以外の解決方法があると考え抜いて、諦めないことが大切。決めつけない『素直な心』を持とう」
「無理やりやってもダメ。悲壮感は十分な原動力にはならない。好きなことや、やめられないようなことを思い切ってやってほしい」
とにもかくにも、自分よりもアフガンの人々を愛することのできる人だった。こんな人はなかなか存在しないと、改めて思う。彼の遺志を少しでも良い形で引き継ぎたいと心底思う。
ご冥福をお祈りします。
(追記)
いま多くの人が「彼を殺した人のことを許せない」と言っているけど、なんとなく、中村さんは「まぁ、どうかアフガンの人たちを責めないで、ゆっくり見守ってあげてください」と天国でおっしゃっているような気がする。
NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715)
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
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