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AmeriCorps*VISTA

PeaceCorps(アメリカ版青年海外協力隊)の国内版とでも言うべきプログラムに、AmeriCorps("アメリコー"と読む)というものがある。アメリカにおいてもPeaceCorpsほど認知度は高くないが、非常に素晴らしいプログラムだ。

日本語でこのプログラムを紹介した記事があまりないようなので、インターン先でAmeriCorpsプログラム参加者(22歳、女性)にインタビューした内容も織り交ぜて、その概要を少し書いてみたいと思う。(というわけで、今回も一部のマニア向けの記事です…)


AmeriCoprsとは、アメリカ国民に国内の社会問題解決の現場で一定期間働く機会を提供することを目的としたプログラムである。僕も調べるまでは知らなかったが、AmeriCorpsといっても、

・NCCC (National Civilian Community Corps)
・State and National
・VISTA (Volunteers in Service to America)

という3つのプログラムに分かれているらしい。今回は、このうちNPOに直接かかわる
AmeriCorps*VISTA(以下、VISTA)に絞って書いていきたい。



・プログラムの概要
VISTAとは、アメリカ政府が運営する、アメリカ国内の貧困にかかわる問題を扱うNPOにおいて1年間フルタイムで働くというプログラムである。

ユニークなのは、プログラムの対象が間接業務に絞られているということだろう。間接業務とは、受益者に直接サービスを提供しない業務のことである。例えば教育プログラムを例にとれば、直接子どもに教えることはせず、そのプログラムの企画・運営を行うわけである。このあたり、日本の青年海外協力隊とはかなり趣が異なる。

なお、AmeriCorps*VISTAという現在の名称になったのはクリントン大統領がAmeriCorpsを創設した1996年だが、VISTA自体の歴史は1965年にまで遡る。創設以来17万人がVISTAとしてNPOで働いたというから、そのインパクトは計り知れない。

・ 給与面
一部の手当(住居や社会保険など)を除く大部分が政府から支給される。そのため、NPOとしては政府から労働力の助成を受けていることになるわけだ。ちなみに僕がインターンをしているNPO(年間予算規模10億円程度、総職員100名強)では現在計7名のVISTAが働いている。

給与額は、「アメリカの貧困層と同様の経験をするため」という名目で、給与基準は各地域の貧困ラインと同レベルの額が支給されている。この支給額だけで生活するのはかなり苦しいらしく、インタビューした同僚は親からの仕送りに頼らざるを得ないと言っていた。

・参加者層
年齢制限はなく、参加者は高卒18歳から定年後の層までと幅広い。なかには70歳くらいの人も参加しているとのこと。ただし、やはり多いのは大学(院)卒業後に参加するケースと民間企業で数年働いてから参加するケースで、平均年齢は25歳程度。

AmeriCorps
↑駅などで見かけるAmeriCorps募集の看板

・参加動機
インタビューした同僚いわく、「自分の進路を定める上で何らかの経験をしたい。でも、せっかく何かやるなら社会のためになることをしたい」というのが最も一般的な参加動機とのこと。その他にも、NPO就職に向けたステップと考えて参加する人や、はたまたリストラにあったのをきっかけに参加するという人も多いらしい。

・応募プロセス
一斉募集をするわけではなく、新しい案件が出るごとに職務内容がHPにアップされ、それを見て興味を持った人間がHP経由でレジュメをNPOに送るらしい。ただ、NPO側は独自のレジュメ提出を求めることも多いなど応募プロセスはバラバラで、同僚いわく「HPは単なる求人情報サイトでしかない」とのこと。

・サポート制度
サポート体制は充実しており、5日間程度の研修が開始前含めて3-4回ほどある。また、プログラム期間中はPoint Personと呼ばれる相談役のような人から業務面や生活面でのコーチングを受けることもできるとのこと。

・終了後の進路と評価
最も多いのが大学(院)進学で、だいたい4-5割くらいとのこと。また、NPOに就職する人間も3割程度とかなり多く、中には受け入れ先の団体にそのまま就職するケースもあるらしい。進学後にNPOに就職する層も合わせれば、かなりの割合でNPOセクターに携わっていることになるだろう。

そして、何よりも印象的なのは、このプログラムに参加することが、「キャリアとしては最高に評価される」という同僚の言葉だ。行政機関でも民間企業でも、AmericCorps経験者と履歴書に書くことは、この上ない評価に繋がるらしいのだ。日本では青年海外協力隊での経験が必ずしもプラスに取られるわけではないので、この点では両国に大きな違いがあると言えるだろう。


以上、長くなったが、調べ物&インタビューの結果を徒然なるままに書いてみた。

総じて、社会的意識が高くヤル気のある人間に一歩踏み出すキッカケを与える、非常に有意義なプログラムだと思う。なかでもVISTA経験者が世の中で高く評価されていることは、NPO/民間/政府というセクター間の人材循環を促進する上でも本当に素晴らしい。

雇用対策という名目なのだろうが、オバマ政権は2010年予算でAmericorpsプログラムに3.7億ドル(前年比37%増)を計上した。受け入れ側のNPOの体力が若干心配ではあるが、経済不況で助成金や寄付金が大幅削減される中、NPOにとっては久々の嬉しいニュースのようだ。

日本でも民主党政権がNPOや社会起業家に積極的にお金を出し始めているが、ぜひ非営利セクターの発展にとって意義深いお金の使い方をして欲しい。
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Comment

はじめまして★
Twitterで紹介されていたので、ブログ拝見しました。PeaceCorpsのことは知っていましたが、AmeriCorpsは初めて知り、とても興味深いと思いました。日本でもそういう仕組みができたらいいなぁと思います。絶対参加してみたい!
コメントをくださり、ありがとうございます!NPOが台頭しつつある今、日本でもこうした枠組を参考に何か面白いことができると思います。それにしても、アメリカのNPOはやはり日本よりも規模が大きい分、色々なことが行われていることを実感しています。
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